第3話   魔王の妻(3)

 1週間もしないうちに、アリアは普通食を食べられるようになり、歩けるようになった。

 アリアが健康になってくると、夫婦の証がしっかりと色づきだした。



「いい色になってきたな」


「夫婦の証ですか?なんだか、ランス様の痣が鮮やかになってきましたね」


「アリアの色も鮮やかになってきたぞ」


「そうですか?」



 アリアは首を擦る。



「私とアリアは繋がっている。アリアの身体の具合で、私の身体も変わる。その反対も然り」


「わたしが病気になると、ランス様も病気になってしまうの?」


「そういうことだ」


「大変ですわ。わたし、病気をしないように気をつけます」


「私も病気や怪我をしないように気をつけよう」


「夫婦は一心同体なのですね?」


「そうだ」



 エスペランスは、愛おしげにアリアと手を繋ぐ。

 アリアは嬉しそうだ。



「アリアの体調も良くなってきたから、そろそろお披露目会をしようと思うのだが、体調はどうだ?」


「もう万全です」


「では、パーティーを開こう」


「わたし、ダンスを知りません。舞踏会デビューはしていないの。だから、テーブルマナーも知りません。お辞儀だって正式な物は知りません。ランス様に迷惑をかけてしまいます」


「立食パーティーにする。マナーはいらないだろう。ダンスは練習をしよう」


「はい。マナーも教えてください」


「順に教えていこう。心配するな」


「はい」



 アリアはエスペランスを見つめる。

 一生懸命の眼差しに、エスペランスはどこに出しても恥ずかしくないレディーに育ててやろうと思った。

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