第5話   結婚式(4)

「アリア、起き上がれるか?」


「ええ」



 アリアはぼんやり身体を起こそうとして、力なく倒れかけてエスペランスに抱きしめられた。

 石の祭壇の上には、血は一滴も落ちていなかった。

 あんなに痛かったのに……。



「アリアの処女の証は、すべて私がもらった。これが血の交換だ。生涯共に暮らそう」


「はい」



 エスペランスはタキシードとドレスを魔力で持ってくると、アリアを抱いたまま、瞬間移動で寝室のお風呂に連れて来た。

 エスペランスがアリアを洗う。

 全身をシャワーで流された。



「湯船に入っていなさい」


「はい」



 アリアは温泉のお風呂に入った。お風呂の景色は一面の赤いアネモネの花畑に美しい青空だった。

 アネモネの花言葉は、「あなたを愛しています」だ。教会の図書室で読んだことがある。

 エスペランスは自分のシャンプーで頭を洗うと、石けんで身体を洗っている。素早くシャワーで流すと、やっとお風呂に入ってきた。

 アリアを抱き寄せると足の上に座らせる。



「綺麗ですね。わたしも愛しています」


「花言葉を知っているのか?」


「すべてではないけれど・・・・・・教会に本があったんです」


「アリアは本が読めるんだな。ここの宮殿にも図書室がある。魔界の知識を与えよう」



 エスペランスは呪文を唱えると、アリアの額にキスをした。



「これで魔界の本も読めるだろう」


「ありがとうございます」


「知識がある者にしか効かない魔法だ。アリアにあちらの世界の知識がなければ、無意味な魔術だ。さあ、どれほどの知識があるのか楽しみだ」


「わたしを試しているのね?」


「ああ、試している。どこまでアリアを愛していいのかも、調べなくては」


「エッチだわ」


「私に抱かれたアリアも、私と同じくらいエッチな身体になったはずだ。これから楽しみだな」


「わたしを変えたの?」


「血の交換をしただろう?私もアリアの事が分かるが、アリアも私の事が分かる。性格も似てくるかもしれないな」



 涼しい風が流れて、火照った体に気持ちがいい。



「さあ、のぼせるだろう。そろそろ出よう」



 アリアは大きなタオルで包まれた。

 エスペランス様は魔術で洋服を出し、それを身につけた。



「わたしも魔術を使えたらいいのだけど」


「覚えられるか分からないが、練習をしてみるか?」


「はい。嬉しいです」



 エスペランス様はタオルで包まれたアリアを抱き上げると、アリアの部屋に戻った。


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