我が妹ながら、なかなかに酔狂なことをする。

竜田川高架線

第1話 お兄ちゃん童貞でしょ

 春休みにもなると、自然と昼夜逆転生活になってしまう。どうにかして矯正しようと思い、寝ずにいようと思うと、結局は昼間に寝落ちしている。

 結局、真夜中はやることが無くなり、布団の上でタブレットをイジるだけ。最近は視力の低下を自覚し始めた。

 

「あれ、お兄ちゃんまだ起きてたんだ」

 

 ノックも無しに開けられた扉から顔を覗かせたのは妹だ。しかもその発言は特大ブーメランを伴っている。

 妹はそのまま部屋に入ってきて、隣に寝そべった。

 

「勝手にスマホ見るなよ」

 妹は俺のスマホを取って、教えた覚えのないロックパターンを解除した。以前は都度変えていたのだが、数日もすればバレるので、最近はもう諦めている。

 

「良いじゃん減るもんじゃないし。見られて困るモノもないでしょ」

「女子とのエロメ」

「は? お兄ちゃん童貞でしょ」

「学校中の女子とヤリまくってる」

「最低。見損なった」

 

 と言ったものの、妹が確認した通り、メッセージの履歴にはエロいやり取りどころか女子とのやり取りさえ存在しない。最後にメッセージをやり取りしたのは妹で



 妹『今どこ』

 俺『教室』

 妹『そっち行く』

 

 放課後に帰宅するべく合流しようとしたときのものだ。

 

「お腹空いた。何かない?」

「夜中の腹減りって、脳が勘違いしてるだけらしいぞ。今食べたらデブる」

「私の脂肪は全部おっぱいに行ってるから大丈夫なの」

「そうかい。お菓子あるよ」

 タンスの上に備蓄していたスティック状のスナック菓子を指差す。

 妹はそれを取りに行った後、早速蓋を開けた。

 

「お兄ちゃんこれ好きだよね」

「俺は好きでも無いよ。お前が好きだから買ってんだよ」

「ええ? お兄ちゃんが食べてるから私も食べてるだけなのに」

「いよいよ何のためにそれ買ってるのかわからないな」

 

 ぽりぽりと心地いい咀嚼音がする。 

 隣で何か食べられてると、こっちまで腹が減ってくる。いわゆる飯テロだ。

 

「お兄ちゃんもいる?」

「じゃあ一本だけ」

 

 妹は菓子を差し出してくるわけでもなく、それを1本咥えて、覆いかぶさってきた。

「はい」

 それを近付けてくる。我が妹ながら、なかなかに酔狂なことをする。全く、仕方ないので、それを噛んで取るも、妹は尚も近付けてくる。

 やがて妹の吐息がかかるほど。

 妹の唾液で濡れた部分まで到達。

 最後には、菓子の硬い感触ではなく、生物的な柔らかな感触までした。

 

「ん……お兄ちゃん……」

 

 妹が声を漏らす。

 スナック菓子で塩っぱくて硬いのか、妹のせいで甘くて柔らかいのか、わからない。口の中がバグる。

 

「……っ、やりすぎ」

 

 頭がおかしくなる寸前だ。

 

「──もう、事故だよ。なに本気になってるの?」

「舌入れといて事故は無い」

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我が妹ながら、なかなかに酔狂なことをする。 竜田川高架線 @koukasen

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