拝啓、真夜中のマイダーリン♡

だぁ

　拝啓、真夜中のマイダーリン♡

　暗い冬の真夜中です。

　お元気ですか、マイダーリン。

　私のダーリンは、真夜中にしか現れない。

　ダーリンは、太陽の光が苦手らしい。

　ニンゲンも苦手で、基本は引きこもり。

　私に会いにくるときにだけ、外に出る。

　ダーリンと出会ったのは夏のこと。

　その夜の私は彼氏と別れたばかりだった。

　メソメソ泣く私を抱きしめたダーリン。

　ひんやりと冷たい手をしたダーリン。

　冷蔵庫みたいな匂いがするダーリン。

　大好きよ、マイダーリン♡

　　　　　　　　　　　　　――私より

　＊　＊　＊

　拝啓、真夜中のマイダーリン♡

　素敵な冬の真夜中です。

　お元気ですか、マイダーリン。

　ダーリンは、真夜中にしか現れない。

　私のダーリンは、私が好き。

　ダーリンは、私が血を流すのが好き。

　ダーリンは、私の血を飲んで大きくなる。

　欲張りなダーリンは、私を貧血にさせる。

　他の女の子の血を飲むのは許せない。

　ダーリンは私だけのものでいてほしい。

　ねえダーリン。

　今夜は会いにきてくれる？

　あなたのために献血も我慢してるの。

　あなたのために鉄分のサプリを飲んでるの。

　ねえダーリン。

　あなたのために心臓を動かしてるの。

　ねえダーリン。

　あなたのためにリスカを我慢してるの。

　ねえダーリン。

　ダーリンはいつまで私を好きでいてくれる？

　ねえダーリン。

　豚の血と私の血、どっちが美味しい？

　大好きよ、マイダーリン♡

　　　　　　　　　　　　　――私より

　＊　＊　＊

　だいすきなだーりんへ

　ねえ、どうしてあいにきてくれないの？

　わたしのこと、もうあきちゃった？

　ねえだーりん。

　わたしはあなたのことがすきなのに。

　ねえだーりん。

　だーりんにとってわたしはかこのひと？

　ねえだーりん。

　わたしのことはどうでもいいの？

　ねえだーりん。

　わたしのちはおいしくないの？

　ねえだーりん。

　だーりん。

　だーりん。

　だーりん。

　だいすきよ、

　＊

　　　　＊

　　　　　　　　＊

　――――――――――――――――――

「あ、またニンゲンからラブレター来てる。ごめん、さっき起きたところ、っと。あの子も、もう死んじゃったのかなぁ。美味しかったのになぁ。残念♡」