第63話


 林檎を乗せた皿を持ってリビングへと戻ると皆が不思議そうな顔でこっちを見ていた。


「二人共何してたの? …って、林檎?」


「うん。グレイさんと用意してたの」


 フィオが俺とアリアメルの持っていた皿を覗きこむ。


「ああ、皆で食べようと思ってな」


「グレイさんそれって…」


 何かに気付いたのか、アレスが驚いた顔でこちらを見ている。


「今日は”特別”な日だからな。皆でこうしてデザートを食べるのもいいだろう」


 俺がそう言うとアレスは何故か泣きそうな顔になり、それを見たミアはアレスを心配して色々と声を掛けていた。

 一方イスカやフィオはよくわからないといった表情をしている。ちびっこ達は単純にデザートがでてきたことに喜んでいる。


 その時、ルルエコがとてとてと近寄ってきて無言で両手をあげる。


「……」


 うーん、これはニナとステラなら”抱っこ”。ラッツなら”早く頂戴”なんだが…。

 まあ普通に早く頂戴の方だろう。


「待ってろ直ぐに…」


「わたしも手伝う」


 あ、そっちか。

 だが皿の大きさ的にルルエコに運ばせるのは少々キツイ。なので…。


「ああ、ありがとう。それじゃあルルエコはそっちを持ってくれるか?」


 俺は片手で皿を持ち、反対側をルルエコに持たせる。


「気を付けてな」


「ん…」


 ルルエコはそう一言だけ発してコクリと頷いた。それを見たニナとステラもアリアメルにお手伝いをすると言い出した。


「あ、二人共お手伝いしてくれるの?」


 アリアメルが優しく微笑みながらそう言うと、二人は


「ニナおさらはこぶのとくいっ」


「任せてー」


 どこか得意気な顔でそう返した。まあ確かに、何度か自分達で食べたお皿をキッチンへと運ばせたことはあるが…。


「それじゃあお願いしちゃおうかな。二人はそっちを持ってくれる?」


 アリアメルも俺と同じように、ニナとステラに皿の反対側を持ってもらい三人で運ぶ。

 俺もアリアメルも中腰の移動しにくい体勢なのだが…運び終わってからアリアメルが二人をしっかり褒めているのは流石だ。


 ふと隣を見ると、ルルエコが褒められているニナ達をじっと見つめていた。

 俺は屈んでルルエコと視線の高さを合わせる。


「ルルエコ。ありがとう助かった」


 こういう時に気の効いた台詞の一つでも言えればいいのだろうが、生憎とそんな器用な生き方はしていない。そういやアドラスの野郎はこういうの得意だったな…。


「…ん」


 それでもルルエコは小さく微笑むとアレスやミアの元へと戻っていった。

 うん、良い子だ。俺のこと怖がらないし。(重要)


 林檎を食べ終えて、アリアメルと片付けを始めると皆が手伝いたいと言ってきたのでテーブルを片付けたり、洗った皿を拭いたりしてもらった。


 片付けも終わり、順番に風呂を済ませる。ミア達の着替えは一先ずアリアメル達に貸してもらった。


 後は寝る場所だが……考えてみたら俺とアリアメルにちびっこ三人ニナ、ステラ、ラッツは同じ部屋だし余裕だろう。


「さて。今夜はミアとルルエコはアリアメルの部屋を使ってくれ。アリアメルは俺の部屋で…… 」


「え、それってまさか…」


 俺の言葉の途中でミアが驚いた顔で反応した。


「駄目だミア! 今は空気を読んで!」


 そんなミアをよくわからない理由で嗜めるアレス。


「で…でも…」


「うーん、ミアさんも勘違いしちゃったかー」


「…ぅー…」


(うとうと)


「パパ、ニナとラッツが眠いって」


 眠そうに目をこすっているニナ、俺の脚に抱き付いて船を漕いでるラッツに全然余裕そうなステラ。


「ほら、二人共こんな所で寝たら風邪ひいちゃうよ。ちゃんとお部屋まで我慢しよ?」


 眠そうな二人に優しく声をかけるアリアメル。


 この状況についていけてないイスカとコダールから来た子供達。


 まさか…まさかこのタイミングでグダるとは。


 ――――――――――


 多分、この場にエミリアが居るとジャンルが異世界ラブコメになる。



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