第12話
……言ってしまった。
『俺と一緒に暮らさないか?』ってプロポーズかよ。今思い返してみると物凄く恥ずかしい…。
ああ、いや、確かに勢いで言ってしまったが後悔なんかはこれっぽっちもないぞ。
取り敢えず1ヶ月の間だけ食事の面倒を見る…から随分大事になったものだ。
まあ、でもしょうがないだろ…ニナのあんな姿を見て、1ヶ月たったらサヨナラなんて出来るわけ無いだろ。
俺の言葉に対する子供達の反応は様々だった。
イスカは
「ええっ?! …で、でもそんな…あ、いえ、凄く嬉しいんですけど…なんかいきなりで驚いちゃって…」
フィオは
「い…一緒に…ですか? ……ニナやアリア姉達だけじゃなく、私やイスカもいいんですか?」
ラッツはなんかよく分かってない感じだったから頭を撫でると、にへーって感じで笑ってた。
アリアメルは
「え…私達全員を…ですか? あの…本当に? そ、そうですか……あのっ、私…頑張ります!」
…何を?
ニナは
「おとーしゃん! ニナおとーしゃんとずっといっしょ」
そう言って嬉しそうに抱き付いて頬擦りしてきた。
ステラは無言で親指を立ててサムズアップで応えた。 どうしよう、ステラのキャラがイマイチ掴めない。
良い子は良い子だと思う…うん。
でも嫌がられなくてよかった…あれで嫌がられてたら普通に落ち込んでたと思う。
立ち直れない可能性すらある…。
早く帰ってくるからと不安そうなニナを宥めて、ギルドへの依頼達成報告と物件探しのため街中を歩く。
物件については予定より大きい物にしないとな…イスカ達の部屋(出来れば一人一部屋)に風呂(必須)と、皆で食事したり集まれるリビングは欲しい。
ちょっと厳しいか?
いや、そこそこの規模のパーティハウスでもあれば何とか…。
金なら何とかなるだろう、蓄えはあるし…玉は一個になってしまったが、うん。
そんなことを考えてるうちに冒険者ギルドへ着いたので中へ入り、何時も通りサシャの列へと並ぶ。
昼を過ぎた冒険者ギルドは早朝以上の喧騒っぷりを見せている。
順番が回ってくるのを待ちながら今日の夕食や物件について考える。周りからは相変わらず視線を感じるが、お前達より今日のイスカ達の夕食の方がよほど重要だ。
「おやぁ? エルダーオークの耳はちゃんと買えたのかいグレイよぉ。まさかちゃんと討伐してきたなんて言わねぇよなぁ、あれからまだ3日しかたってねーんだ。流石に無理があるだろ。いいよなぁ、俺にもエルダーオークの耳が買える店を教えてくれよ」
もう少しで自分の順番というタイミングでガンザスの奴に絡まれる。本当に暇な奴だな。どうやら今日は『血斧』のメンバーは不在らしくガンザス一人だ。
ま、こうなることは予想済みだが。
「よお暇人、俺に構ってほしいのは分かるがお前達は依頼を受けないのか? ゴブリン退治が怖いなら薬草採取なんかもあるぜ?」
「チっ…んなことより俺の質問に答えろよ、お前が何処でエルダーオークの耳を買ってきてのかをよ」
あれ質問だったのか…?
さっきからガンザスは耳耳と言っているが依頼がなくても規定の討伐報酬は貰える(金額はあまり多くない)、その時に証拠として提出するのがオークだと右耳だからであって、今回のような個別の依頼の場合はそれに囚われない(わかれば何処の部位でもいい)。
だから…
「今回取ってきたのは耳じゃねーんだ。いや、耳もついてるから安心しろ、そら」
そう言ってマジックバッグからエルダーオークの首をガンザスへ投げる。
ガンザスは反射的にそれを受けとるが、直ぐにヒッ…と短い悲鳴を上げて首を地面に落とした。
苦痛と恐怖に歪んだエルダーオークの首を顔を青くして見詰めるガンザス。…お前一応ベテランだろうが。
「おいおい…落とすなよ。お前がどうせ五月蝿くするだろうから首ごと取ってきたのに。」
ガンザスにゆっくり近づく。
「ほらもっとよく見ろよ、お前どうせまだエルダーオークの討伐したことないんだろ?」
「や…やめ…」
首を拾い上げてガンザスに近づける。
「グレイさん」
後ろからサシャに声をかけられる。
「さっさと依頼達成報告をお願いします」
しまった…いつの間にか順番が回ってきていた。他にも並んでる奴もいるのに少し遊びすぎたか…。
俺はエルダーオークの首をそっとカウンターに置いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます