第11話
あの後、なんとか泣き止んだニナを膝から下ろして食事の準備をすることに。
俺が居ない間はアリアメルがイスカとフィオに手伝ってもらって作っていたらしい。アリアメルはお姉ちゃんしてるな。
…あ、食事が終わったらニナに人形を渡さないと。喜んでくれるといいんだが。
料理中もニナは俺の服を掴んで傍から離れなかった。
アリアメルが離そうとしたが、そのままで大丈夫だと言うと、少し嬉しそうにわかりました、と答えた。
ラッツは買ってきた食材を見て指を咥えている。林檎の時といい…食いしん坊キャラなのかな?
料理が出来上がり、皆で食事中にイスカをチラリと見る。
フィオと話をしながら美味しそうに食事をするイスカ。その姿はごく普通の少年にしか見えない。彼が本来どんな人生を歩み、主人公として世界を救うのか、気にはなるし何かあれば当然力を貸すが…でも、できればこの子供達には平穏な人生を歩んでもらいたい。
わかっている。
これが俺の身勝手な願いでしかないことは。
―――――
(第三者視点)
ニナは本当の父の顔を朧気にしか思い出せない。まだ幼い少女が覚えているのは優しく、暖かな父の手の温もりと、父が誕生日に人形をくれたこと。
ニナは父と二人、人里離れた森の中で暮らしていた。母はまだニナが産まれてて間もない時に病で亡くなったが、父から沢山の愛情を注いでもらい幸せな日々をおくっていた。
『ニナ。誕生日おめでとう、私達の大切な娘。ほら、誕生日プレゼントだよ』
父はそう言って優しく頭を撫でてくれた。ニナはもらった人形を抱き締めながらこの幸せがずっと続く…そう信じていた。
だがある日、朝起きると隣にいる筈の父の姿が無かった。
先に起きたのだろうかと家の中を探したが何処にも居ない。不安になったニナは父を探す為に家を出ると、そこでニナが見たものは……――
どうしても
どうしてもニナはその時のことが思い出せなかった。何かとても大切なことがあったような…。
気付いたらニナは見知らぬ街の中にいた。父からもらった人形を抱き締め、不安になりながら街の中をさまよう。
父以外の人間のことを知らないニナは誰にも話かけることが出来ずただ、とぼとぼと歩く。こうしてれば父が自分を見つけてくれるのではないか…そう期待しながら。
何度も躓いて服も人形も汚れ、お腹が空いたニナはその場で泣きだした。誰もそんな少女に声をかけたりはしない、皆面倒事は御免なのだ。
しかしそんな少女に声をかけるものがいた。
『…どうしたの、お父さんやお母さんとはぐれちゃったの? 私はアリアメル、あなたのお名前を教えて、ね? 』
その後、どうしてもニナの父は見つからず、だからといって放ってもおけないので、アリアメルはイスカ達と住む小屋へとニナを連れて行った。
アリアメルはなんとなく察していた。
ニナの父親はもう…しかしそれを口にはしない、ニナ自身が父が自分を迎えにきてくれると信じてるうちは。
アリアメル、イスカ、フィオ、ラッツ、ステラ…ニナは一緒に暮らすことになった皆が好きだった。
それでもニナはボロボロになってしまった人形を抱き締めながら、大好きな父を待ち続けている。
ある日、病気になったステラを助けに大人の男の人がやってきた。
イスカやフィオは見た目は怖いけど…と、言っていたがニナにはとても優しそうな人に見えた。
ご飯を作ってくれてるその人の服を掴むと、振り返ったその人と目が合う。
「……ほら、動くな」
そう言って優しく顔を拭いてくれる。
「あっちで待ってろ、直ぐ持っていくから」
すごく優しい目でそう言った。
「…おとーしゃん?」
やっと父がきてくれたとニナは思ったが、朝起きると父はまた居なくなっていた。
ニナは泣き、アリアメルは困った顔をして抱き締めてくれ、ステラも背中を優しく撫でてくれた。
「大丈夫、パパはきっと帰ってくる」
ステラの言った通り父は帰ってきてくれた。抱き付いて沢山泣いた、父はずっと困った顔で頭を撫でてくれた。
ご飯を食べ終わり、父の膝の上に座ろうとしたらその父に名前を呼ばれる。
「ニナ。あー……ほら、これ」
そう言って渡してくれたのは綺麗になった大切な人形だった。
誕生日に父が人形をくれた日を思い出す。
「それと……えーとだな。その、この街に家を買うつもりなんだ。で…お前達さえよければなんだが……俺と一緒に暮らさないか?」
やっぱりおとーしゃんだった!
ニナは凄く嬉しかった。
これからは皆で一緒に暮らせる、ニナはそう思った。
――――――――――
しかし子供達の部屋のことも考え、予定よりかなり大きな家にしないといけないことにグレイはまだ気付いてはいない…(不安感をあおる感じで)
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