第6話


「朝っぱらから絡んでくるなよ鬱陶しい。暑苦しいのはその面だけにしとけ」


 ガンザス達の様にこうして直接絡んでくる奴等は珍しい。

 昔俺をパーティに勧誘してきたが断った。それ以来こうしてガンザスの奴はしょっちゅうデカい声で、あることないことを態々俺に聞こえるように話したり、こうして訳の分からないことを言いながら絡んでくる。

 構ってちゃんかよ。


「おい何だよ連れねえなぁ。 聞いたぜ、お前今度はスラムのガキ脅して何か企んでんだろ? ああ嫌だ嫌だ…こんな犯罪者糞野郎が同じBランク冒険者だなんて…」


 脅してねーよ。


「あん? 俺より2…いや3年遅れで漸くBランクになれて嬉しいのか? 分かるぜ、俺もE+になれた時はめちゃくちゃ嬉しかったからな、丁度今のお前達みたいにな?

 いやあ初心を忘れないってのは良いことだと思うぜ。そら、ゴブリン退治の依頼書はあっちだ取ってこい」


「テメェ……死にたいらしいな」


「ちょっ…おいリーダーここじゃ不味いって!」


 ガンザスが戦斧バトルアックスに手をかけると、『血斧』のメンバーが必死になって止めにはいる。

 あのまま奴が武器を構えたら正当防衛が成立したんだがな。


 何だ、別に狙ってないぞ?


 …少しだけしか。



 仲間に止められて少し冷静になったのか、ガンザス達は俺を睨みながら立ち去っていった。



 ……こういう時、普通ならギルドの職員やギルドマスターなんかが仲裁に入りそうなものだが意外と誰も止めに来ない。周りの冒険者達は直ぐに賭けを始めるし。


「これを受ける」


 手に持ってた依頼書を受付に出す。


「他に何か言うことは無いんですか」


 そう言ってジトっとした視線を向けるポニーテールでメガネの受付嬢サシャ。


「俺は悪くない」


「子供じゃないの……」


 サシャは初対面で俺の顔を見ても怯えなかった数少ない受付嬢だ。 なのでコイツが受付に居るときは、多少混んでいてもそこに並ぶことにしている。

 尚本人には嫌がられてる模様。


「はぁ、もういいです。 それで今回の依頼は……青い肌のオーク…エルダーオーク…ですか。 一応訊きますが、臨時で何処かのパーティに入ったりは「しない」……」


 こういう難易度の高い依頼の場合、他のパーティと組んで合同で受けたりも出来る。 ただその場合は他にこの依頼を受けてくれるパーティが現れて、ギルドから連絡がくるまで待機しとかなければならない。

 しかもこの依頼を出した人間はオーク下位種エルダーオーク上位種の区別もついていないのか、依頼料は普通のオークの相場分しか提示していない…と、いうか払えないんだろう。田舎の村は貧しいからな。

 多分ギルドも一応説明はしたんだろうが、村からお使いに出された人間がそれを理解できなければ意味がない。


 後こんなことは別に珍しいことでもない。依頼にはその難しさに見合った相場があるが、皆がそれを払える訳じゃない。

 子供がなけなしの銅貨を持ってきて、『盗賊に拐われた家族を助けて欲しい』なんて依頼を持ってきたこともある。

 ギルドの職員も泣きじゃくる子供にどう説明しようか悩んでいたが、盗賊が溜め込んだ宝があるかもしれないから俺が受けた。


 ま、依頼は達成したが宝どころかろくに売れそうな物も無かったが。


 故にこんな依頼を受ける奴が他にいる訳もない。待つだけ時間の無駄だ。


 何でこんな依頼受けるのかって?

 ……エルダーオークの睾丸は強力な精力剤の材料だから貴族が欲しがるんだよ。かなり高値で売れる。



 そして俺はさっさとこんな依頼終わらせて、イスカ達のご飯を準備しなければならないのだ。


 依頼内容は『近くの森で最近青い肌のオークを見かけるようになった。 村人達が不安がっているから退治して欲しい』


 実にシンプルだ。場所はバストークから馬車で1日って所か……討伐に時間をかけなければ明後日の朝には帰ってこれるな。


「グレイさん」


「何だ?」


 受付処理をしてもらい、早速出発しようとするとサシャに呼び止められる。


「いつもありがとうございます。 …我々ギルド職員に貴方の噂を信じてる人は一人も居ません。 今回も無事に帰還されることを祈ってます」


 うん…? これから睾丸を取りに行こうって時に何の話だ?



 ――――――――――


 移動はカットしますね…

















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