第3話 岐路
苦しそうにするステラという少女。 この子がヴァンパイアなら、この症状は栄養不足による吸血衝動が原因かも知れない。
ヴァンパイアと人のハーフやクォーターは元のヴァンパイアに比べ、力や魔力はかなり落ちるが日光や十字架等の弱点が無くなるという特徴がある(日光に関してはただ単に苦手な奴も多いらしいが)。
吸血衝動はあるにはあるが我慢できる程度のものらしい。 ただ栄養不足が続くと耐え難い渇きに悩まされて、衝動的に他者を襲ってしまう者もいる。
だからまぁ、単純にこの子を回復させるなら、血を与えるか栄養不足を解消してあげればいい。
幸いステラが他の子達に襲いかかってないのは、本人もどうしたいのか、どうしたら楽になるのかが分かってないからか。
イスカ達はステラがヴァンパイアの血を引いていることを知らないのだろうか。 知っているのなら、ステラを助けてほしいなんて、知らない人間に頼ったりはしないとは思うが…。
ヴァンパイアハーフやクォーターは人間にとっても、ヴァンパイアにとっても差別の対象だ。
勿論、全員が全員差別したりする訳じゃないが…。
「あの、どうですか? ステラの病気は…その」
心配そうに声をかけてくるイスカ。
「いや、この症状は病気じゃないぞ」
「え…でもこんなに苦しそうにしてるのに…?」
「ああ、これは栄養不足が原因だな」
「栄養不足……」
明らかに落ち込むイスカ達。
まあ、無理もないか。
病気なら俺が治せると思っていたのかもしれないが(いや、治せないが)、栄養不足となると、普段から満足に食事が出来ないであろうイスカ達にはどうすることもできないだろうしな。
まあ、俺からしたらとても簡単な問題になった訳だ。 なんといっても普通に食事をさせるだけでいいんだし。
こう見えて俺は結構稼いでいるのだ、俺はパーティを組まずにやってるから報酬も全額自分のものだしな。
昔はあるパーティに所属していたが、色々あってそこを抜けてからはずっとソロでやっている。
はいそこ組んでくれる奴が居ないだけだろ?とか言わない。
全然そんなことないし(震え声)
「お前達は普段食事はどうしてる?」
「ええと…教会がしてくれる炊き出しとか…花が売れたら市場でパンが買える時があります、後は…その…」
「あー…悪い、もういい」
大体分かった。
恐らく一番豪華な食事は教会がやっている炊き出しなんだろうが、あれは一週間に一度ぐらいの筈だ。
ま、まあできる限りのことはするって言ってしまったからな。 何よりここでこの子達を見捨てたりしたら、俺は絶対に後悔する。
ふ……俺の自己満足の犠牲になるがよい。
「なあ……――」
流石に悪いと遠慮するイスカ達に対し、弱ったステラを盾にとり、取り敢えず一月の間だけ、俺があの子達の食事の面倒を見る約束を取り付けた。
ククク、俺みたいな男を頼ったのが運の尽きよ……いきなり重いものは胃が受け付けないかもしれないから、今日の所はパン粥に小さなフルーツをつけるか。
市場へ買い出しに行こうと、イスカ達の住む小屋から出て歩いていると後ろから嫌な視線を感じる。 俺が後ろへと振り返ると、いかにもな見た目のチンピラが五人立っていた。
ブーメラン? はて…
そのうちの一人であるスキンヘッドの男が馴れ馴れしい笑顔と態度で近づいてきた。
男は突然俺の肩に手を置いて
「よお兄弟、お前さんもあの小屋のガキに眼をつけたのかい?」
そう言った。
ほお、そうか。
「……馴れ馴れしいんだよ、汚い手でさわるんじゃねえよ」
俺は迷わず男の腕の骨を折った。
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