第29話 王国会議、終わる。
「さて、クリス殿下、ご婚約おめでとうございます。」
王家の控え室に戻った私たちを宰相が祝福してくれた。
「ありがとう。」
「まあ、クリス様なら王妃になっても色々されるんでしょうね。」
シアがあきれたような声でそう言う。
「まあ、この3ヶ月で色々やったとは思うけど……。」
まずは城内の清掃。帝国の間者や経歴が不確かな者を排除し、侍女も信用できるもの――――――なぜか私付きの筆頭侍女がタチアナで、その下に元王太子妃候補のハイレント侯爵令嬢のリサと、同じくレイドズ伯爵令嬢のジューンが付いた。あと、拐われ前科6回(未遂を含む)のフェリスの侍女は軍の暗部から4人ほど引き抜いて当てた。侍女兼護衛だ。最初は私の侍女もタチアナ以外は軍から護衛兼でいれるつもりだったんだけど、シアの「クリス様に護衛は要りません。むしろ礼儀作法をしっかり学んでもらうために上級貴族の令嬢を付ける方がいいです。」といわれ、シアから依頼があったリサとジューンが来たのだ。
そして、次に取りかかったのは貴族のクリーニングだ。とはいっても、20家の処分の影響で自浄作用が働くようになったのか、目こぼしできるようなもの以外は自ら処断していたうえ、目こぼしの確認まで私にして来る始末。勝手に綺麗になってくれた。宰相は「クリス様が何か言うだけで貴族がビクビクしますから、貴族の統制が楽になりました。」と礼を言われるほどだ。なんか納得いかない。
なんだか貴族をはじめ、国内では私が次期女王になると言われ始めてるんだけど……。
「で、王太子の婚約者になっても、将軍は辞めないんですね。」
「まあ、帝国がまだ我が国を狙っているので辞められないですね。」
私の指揮によって惨敗した帝国も、私が将軍を辞めたら攻勢をかけてきてもおかしくはない。
「帝国は私が将軍を辞めてからも攻撃してこないようにしてもらいたいですね。」
軍事ではなく、外交で解決してもらいたい。本当に。
「そういえば、王家の御用商人が代わられるそうですが……。」
そう、宰相が聞いてくる。確かに御用商人が変わることになった。と言うか……。
「だって、クリスちゃんの商会があるんだったら、そっちから買う方が早いじゃない。」
「あと、フェリスが『お姉様の商会で売っているなら、そちらから買います!』って言ったから、国王陛下も押しきられた感じでしたね。」
「ああ、なるほど。クリスリッタ商会ですか。」
王妃と、クリスの証言で納得がいった宰相であった。
「でも、御用商人を変えてもいいの?」
「懇意にしている商会が変わるだけですので、制度上問題はないですな。まあ、アドバンス商会からクリスリッタ商会への嫌がらせが考えられますが……、問題ないですな。」
そう、宰相が回答してくれた。
「いや、嫌がらせって――――――。」
「クリスリッタ商会に嫌がらせをすれば、貴族や他の商会と取引ができなくなりますので、嫌がらせはできないでしょう。」
すでに、エチーゴ商会がクリスリッタ商会に手を出して廃業したらしい。
「私はなにもしてないんですけどねぇ。」
いろんな所で私への忖度が始まっているらしい。
「まあ、この国一の権力者には逆らえないでしょうね。」
シアの言葉に頷く一同。って言うか、国王陛下も頷かないでください。
「最近は、うちにも融通する代わりにクリスによろしくって輩が来ているな。」
そう言う実の父のウォルスター子爵。
「ま、そんなやつは突っぱねてやったがな。クリスはそう言うのをあまりよく思わないんじゃないかなぁって言って。」
「はぁ。ごめんね、迷惑をかけて。」
「いや、構わんさ。むしろ領地が増えたことが頭の痛い問題だな。」
確かに領地が2倍以上増えたからね。しかも、件のメルドサ領を治めて、廃絶させられた子爵は関税を限度以上に高くしていたもんだから、少し遠回りだけど、ウォルスター領を通っていたんだよね。
「まあ、そっちはこっちで何とかするがな。」
「頑張ってね。困ったことがあったらうちの商会を頼ってね。」
「そうだな、そのときは頼む。」
うちの商会なら過去に貴族の財政立て直しをしたことがあるし、適役でしょう。
こうして3日間にわたる王国会議は終了した。ちなみに、それぞれの領地は関係性の高い領に併合されたり、王家直轄領になったりした。ただ国王陛下に「新しく直轄領になった領地の経営を頼めない?」と聞かれたので即行でお断りした。だって場所バラバラだからねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます