婚約者

第28話 王国会議、始まる。

 戦勝記念式典から3ヶ月。王国会議が行われた。王国会議に参加するのは、通常なら国王、王妃両陛下と、成人済みの王太子、王太子妃両殿下と、閣僚、辺境伯以上の貴族である。だが、今回に限って、伯爵と男爵が参加していた。クリス将軍の秘書としてバグマン女伯爵が、そして、王家から呼び出されたクリス王女の実家ウォルスター男爵である。


「さて、今回の王国会議は、先の全貴族を呼び行った国家反逆罪で捕らえた20家の処分と、その後に起こったトリスタン元公爵の処分、および、5年前に起こっていた王女誘拐事件の褒美としての陞爵、そして、王太子の婚約者の決定である。」


 そう宰相が宣言した。

 緊急を要する案件以外は、半年ごとに行われる王国会議で決定される。といっても、王国会議は閣僚、官僚が決め、国王が許可を出したものの追認が中心で、問題があるものを再考を求めたり、王家より意見を求められる場である。


「まず最初に、5年前の王女誘拐事件だが、将軍が報告していなかったものがあり、さすがに4回も救っていただいたなら十分庶民なら貴族に、貴族なら陞爵するに価する。よって、将軍の陞爵か叙勲になるのだが、すでに王家に入られておる。よって、王女殿下の実家であるウォルスター男爵の陞爵をすることにした。異論はないか?」


 参加した貴族たちは異論はないようだ。まあ、クリスに物流を押さえられているのだから、反論できなかったりする。


「異論がないようなので、ウォルスター家は、本日より男爵から子爵に陞爵する。次に、20家の処分だが、20家全てを廃絶する。すでに当主は拘束し、処罰を行う予定である。また、バグマン辺境伯は、旧辺境伯領を早急に押さえる必要があったため、王命によりバグマン女伯爵の叙爵を行った。また、メルドサ領はウォルスター領に褒美の一環として併合させることにする。それ以外の領地についてどこの領に併合させるか、王家直轄領にするか会議にかける。」


 会議は数日にかけて行われる。初日は議題と内容だけを発表し、どうするかを話し合ってもらい、最終日に決を取るというかたちになっている。


「次に王太子の婚約者であるが、クリス=ウォルスター=ラドファライシスに決定した。なお、側妃についてだが、未定である。これは、現在王太子が乗り気でないことが理由である。婚約式は最終日の翌日に行う予定である。」


 こうして、私はエルヴィン王太子の正式な婚約者となった。


「最後に、トリスタン元公爵が起こしていた事件について公表する。トリスタン公爵は夫人が22人も嫁いでいたが、その半数は借金のかたに嫁がされていた。他にも、公爵命令として半ば誘拐同然に嫁がされたものもいた。だが、よりにもよってクリス将軍の実妹に手を出そうとしたため、不当な増税で肥やした私腹をはじめとする諸々を暴かれ、王命で私財没収の上、男爵に格下げ、辺境に送り込むことを行った。これの追認を求める。」


 これも満場一致で追認された。だけど、私の名前が出た瞬間、大半の貴族が「ああ。」って納得したことには納得いかないんだけど……。


「あと、ウォルスター家のご令嬢リリー嬢の婚約者だが、王家が斡旋することとなった。領主として次期子爵に相応しい者を婿にする予定だ。よって、ウォルスター家への婚約の申し込みは王家に言うように。では、休憩に入る。再開は3時間後とする。」


 宰相の宣言で休憩と言う名のロビー活動が始まる。




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2月22日の近況ノートに書いてあるように、1ヶ月分(4話)以上のストックが準備できたらストックが切れるまで毎週火曜日にで更新します。

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