第24話 妹と妹、母と母

「初めまして、ウォルスター男爵の令嬢、リリー=ウォルスターです。」

「初めまして、ファライシス王国の王女、フェリシア=レミィ=ラドファライシスです。」


 リリーに約束した2日後、私はお茶会を開いた。参加者は私と。うん、ややこしい。妹たちは、「お姉様が~」「お姉ちゃんが~」と、私の話で盛り上がっている。


「とりあえず、王妃様は王妃様と呼びますね。ややこしくなるんで。」

「そうね。確かにややこしくなるわね。」

「クリスちゃん、いつもなんて呼んでるの?」

「お義母様と呼ばせていただいてます。」

「一応、義理の娘になったからね~。」

「なるほどね。王妃様、娘をよろしくお願いします。」

「わかりました、ウォルスター男爵夫人。」


 互いに礼をする母二人。


「あ、そうだ。王妃様、少し相談したいことが……。」

「なんでしょう?」

「端的に言うと、リリーの事です。」

「……ああ、なるほど。では、フェリスとリリーちゃんが友達なってもらいましょう。そして、将来王家がお婿さんを探すと、ウォルスター家に来た縁談等に返答してもらいませんか?王家の印を入れた証文を渡しますね。」

「いいのですか?」

「ええ、リリーちゃんもフェリスと同じですから当然ですよ。」


 そう言って微笑む王妃様。


「ありがとうございます。我が家では対処が難しいお方もおりますので。」

「まあ、実際に私は成り上がりだから。それに男爵になら上から言いやすいからね~。」


 苦笑いをするしかない。


「じゃあ爵位をもっと上げましょう。侯爵くらいなら――――。」

「止めてください。」「無茶ですよ。」


 さすがに爵位が下から2番目から上から2番目まで一気に上がってしまうと勝手が違いすぎる。


「ところで、対処が難しいって、一昨日には?」

「それは、昨日トリスタン公爵がリリーを妾にするという書状が来て……。」

「トリスタン公爵?」

「あらあら、あのがそんなこと言ってたの。へー。」

「王妃様?」

「トリスタン公爵は50過ぎで縦より横の方が大きいかなって人で、確か夫人がいるのよ。」


 それを聞いて頭が痛くなってきた。


「あー、腐りきったジジイですか。。」

「潰せるの?」

「そうですね。それだけ妾がいるならでやってる可能性がありますからね。無くてもいくつかでっち上げればいいでしょう。」

「黒いわね。」

「……妹たちは、素直に育ってほしいですね。」

「「そうね。」」

「しかし、何でこんな風に育っちゃったのかしら。」

「それは、で学んだんですよ。謀略と欺瞞の中でしたし。」


 激戦の中を生き残った彼女に娘を戦場に送ることは(二度と)ないようにしようと思う母たちであった。



 2日後、トリスタン公爵が6つの家から「借金のカタに娘を強引に嫁がされた」と申し出があり、トリスタン公爵は男爵に降格、辺境へ転封されることとなった。この時、彼について行ったのは、最初に婚姻をした1人だけだったという。

「まあ、実家に戻れなかった人たちはクリスリッタ商会で雇ったんですけどね。」

「クリス様、誰に向かって言われたんですか?」


 シアがツッコミを入れる。


「ああ、独り言。この件は後処理の方が大変だったなあ。

元公爵と連座される事を想定して娘を切り捨てる親がいたり、『うちは関係ない』と言ってウォルスター家にすり寄って来たバカがいたしね。」

「ええ、『妾でいいので娘を』と言ってウォルスター家やバグマン家に来た家もありましたね。『我が家には娘しかいません。』と言ってお断りを入れましたら、崩れ落ちましたね。『ご当主の妾でも』と食い下がる人もいましたけど、『私が当主です。』と言ったら放心状態になってましたわ。」


 クックックと笑うシア。


「うちの実家は、『娘は半分独立して王家に行っちゃったんで、うちに発言権も金も権力もないけどいいの?』と言ったら殆どは諦めたそうね。『当主の妾でも』には、『娘に聞いてみるから、ダメだったら諦めてね』と言ったら諦めたそうよ。」

「さすが、この国の実権をから握ってるお方ですね。」

「握ってるつもりはないんだけどね。」


 やれやれと肩をすくめた。

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