第21話 妹を助けるのは姉の役目
最初はピリピリした空気になったが、その後、和やかになった……。というか、和やかにならざるおえない。なかったこととして許しを与えたからだ。まあ、空気を変えたのは空気を読まない王女の功績であった。「そんなことよりお茶飲みましょう!」と空気をぶち壊したのだ。
「そういえば、お姉様にはいつも助けてもらって――――。」
「フェリスはなぜ、いつも私が助けなきゃいけない状態になってるのよ!」
空気を読まない王女はいまだ健在だった。だがそのネタに食いついた者がいた。
「その話は興味ありますわ。聞かせてもらえますか?」
エリーゼの言葉に、フェリスは目を輝かせて答える。
「あれは、お姉様の凱旋の時――。」
その当時の事を語るフェリス。その熱い語りようは、まるで恋する乙女のようだった。
「へぇ、そうだったんですか。ところで、クリス様はなぜフェリシア様が拐われるとわかったのですか?」
「あーそれは経験則からかな。」
「経験則?」
「ええ、それまでフェリスが5回も拐われているでしょ。なので、フェリスが拐われる前提で準備していただけ。それが今回は上手くはまっただけね。」
「「「「「5回?」」」」」
当事者の二人以外、王妃様を含めた全員が聞き返した。
「あー、1回は表沙汰になってないから知ってる人物はいないんだっけ。」
「表沙汰になってない事件があるの!?」
王妃様が聞き返す。それは親として当然である。
「ええ、一応迷子扱いで送り届けたんですよ。」
「え、ああ、そういえば昔、迷子になったって帰ってきたことがあるわね。」
「あ、たぶんそれですね。最初に拐われた半年後なんで、4年半前かな。」
「あーあの時なのね。」
「そうですね。あの日は2回目だったんで面倒臭かったから迷子扱いしてお城に送り返したんですよ。城下町だったので。それに休暇中だったし。」
思わず本音が出ちゃった。
「じゃあ、助け出したのは……6回?」
「6回ですね~。何でそんなに拐われるのかしら、この娘は。」
思わず、フェリスの頬っぺたを左右に引っ張る。
「ふぇー。ふぉんふぁふぉふぉひってふぉ~。」
「なに言ってるかわかんないわね。」
引っ張ってた頬っぺたを離す。頬っぺたをさする義妹。
「……痛いです、お姉様。」
「…………さすがにあの中には入っていけませんわ。」
姉妹のじゃれあいには、入っていけない令嬢たち。
「じゃあ、1回分お礼を追加しないとね。」
王妃様は2回目の救出のお礼をしようとする。
「いいですよ、もうすでに家族ですから。妹を助けるのは姉の役目ですわ。」
「お姉様……。」
「クリスちゃん……。」
「「クリス様……。」」
カッコいい台詞をはいたクリスに対し、目をハートにしたのが義妹だけじゃなく、令嬢二人追加された。
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