第20話 王太子妃候補
お昼過ぎ、テラスで王妃様主催のお茶会が始まった。
参加者は、王妃様、フェリス、王太子妃候補の私、ワインスター公爵令嬢エリーゼ、ハイレント侯爵令嬢リサ、デリヴァンス侯爵令嬢アネッサ、エンシェン伯爵令嬢ミリー、レイドズ伯爵令嬢ジューン。それに、私の付き添いとしてバグマン女伯爵ことシアと、王妃様より指定があった私の私的侍女のタチアナが加わる。5人の令嬢たちは私に挨拶をしてくれた。
「皆様、はじめまして。私はクリス、クリス=ウォルスター=ラドファライシスです。よろしく。」
上位者として挨拶をする。この茶会に参加している者の中で2番目に地位が高いのだ。フェリスよりも地位が高い理由は義姉だからではなく、王女+将軍なので、相対的に高くなっただけである。
「よろしくお願いします、クリス様。ところで、王妃候補をやめられた方が二人ほどいるのですが、その方々が私たちに挨拶もなしと言うのはどういうことですか?」
エリーゼの発言に同調する他の4人。
「それはおかしなことをいいますね。こういう場での挨拶は下位の者から行うのが普通でしょ。なぜ、あなた方は私に挨拶もなしなんでしょうね。」
シアが怒った表情をして、発言したエリーゼに言葉を返す。
「当たり前ではありませんか。私は侯爵令嬢。あなたは元辺境伯令嬢。序列的に私の方が上ですわ。」
うん、確かに貴族の子弟は庶民よりは上になるんだけど……。
「彼女は昨日、伯爵に叙爵してますので、あなたたちよりも序列は上ですわよ。」
私が代わりに答えた。この場合、貴族の当主の方が格が上だ。
「えっ!?…………私、……その、知らなかったので――――。」
「私が彼女と一緒に来たときに彼女の”爵位”も一緒に告げられたのに気づかなかったと?」
宰相を探しだして携帯用コンロの件を確認したので遅れたのである。王家の執事であるセバスチャンがちゃんと名を告げて案内してくれたのに、気づかないというのは問題である。
「まあ、私に気をとられて聞き逃したということにしておきましょうか。」
ここであえて逃げ道を用意して恩を売っておけば、社交界では有利になる。もちろん王太子妃争いにも――――。
「そ、そうですわね。私、クリス様の美しい佇まいに気を取られ、うっかり聞き逃しておりましたわ。申し訳ございませんでした、えーと。」
「家名は変わっておりませんよ、エリーゼ様。」
「ええ、申し訳ありませんバグマン女伯爵閣下。」
謝罪するエリーゼ。ちなみに、タチアナは令嬢とかいう以前に侍女なので、令嬢に声をかけて挨拶することは主人から紹介されたときだけである。
もうすでに上下関係は確定していた。初っぱなに脱落したはずのライバルがいたので煽ったら、カウンターでダメージを受け、それをなかったことにされて恩を売られてしまったのである。そして、この人物を追い落とし、自身が王妃になるには力業が通じない。搦め手を使って何とかするしかないことに。そして、社交界で聞く彼女の実績から、簡単に落とすことはできないことも……。彼女の功績は、国防、この場にもいる王女の救出が”複数”、そして、不正を行った貴族の告発。この内、使えそうなのは王女の救出が“複数”あることか。これを調べていかなくてはならない――――。
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