第15話 王家入り

「静粛に!もう一つの案件の発表である!」


 宰相が声を張り上げ、もう一つ案件があることを伝えると、謁見の間は静寂を取り戻す。


「次に、将軍の養子先について発表がある。彼女の養子先は我がラドファライシス家とする。」


 国王陛下の発表に誰もがとして国王陛下を見る。この件を知っていた王妃と宰相以外、


「最初は手を上げていた家も多かったが、大半の家はある一件の後、辞退をした。もし将軍が一族に入るとその家と同じ目に遭うと判断し、手を下ろしたのだろう。我が国の貴族は腰抜けと言うしかない。不甲斐ないぞ。残る家も先ほど捕縛されていった。どの家も引き受けられないのなら我が王家が引き受けよう。これより、将軍クリス=ウォルスターは家名をラドファライシスと名乗り、王家の者としてこのラドファイス城に住むように。」


 誰もが理解できない中、最初に動き出したのは、王女フェリシアだった。


「お姉様がお兄様と結婚しなくてもお姉様になるんですね、お母様。」

「ええ、そうよ。これからクリスちゃんがフェリスのお姉さんよ。」


 ただし、復活の方向性が違った。


「へ、陛下。発言をお許しください。」


 一人の貴族が手を上げる。


「うむ、許そう。」

「ありがとうございます。王家に王族以外の者が養子として入るのは問題があるのではないでしょうか?」

「ふむ、宰相。」

「は、私から説明します。過去に前例があります。上級貴族との繋がりが必要で王家に女子が居なかった時、一度王家が養女に迎えてからその貴族に嫁いだ例があります。」


 前例がある話なのか……。


「陛下、私も発言をしてもよろしいでしょうか?」

「クリスよ、まだ席を発注したところでな、まだ用意できてないので、今日のところはそのままにしてすまんな。仮の椅子を持ってこさせるので待っておれ。」

「いや、そんなことはどうでもいいんです。聞きたいことがあるんで聞いてもいいですかと言ってるんです。」


 王様がどうでもいいことを言うから、ツッコミを入れないといけないじゃない。


「おお、何でもいいぞ。部屋はどこがいいか後で見てもらうことにするが。」

「いえ、それでもないです。えーと、私は王太子妃候補から外れるのでしょうか?」

「いや、クリスは今後も王太子妃候補としていてもらう。兄妹でも義理の兄妹なら結婚はできるからな。」

「陛下、それなら私も異論はありません。」


 こうして、クリス=ウォルスターは、クリス=ウォルスター=ラドファライシスとなった。




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今回で今章は終わりです。

次回より毎週火曜日公開となります。

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