第14話 重大案件

祝勝会から10日後、謁見の間


 この日、謁見の間にはどうしても地元を離れられない者を除く全ての貴族が揃っていた。それも一番下の騎士爵までいた。

 余りにも多いため、爵位を持つ当主のみ謁見の間に足を踏み入れることができた。近衛騎士以外で唯一、爵位はないが将軍であるクリス=ウォルスター男爵令嬢だけは謁見の間に入ることができる。



「国王陛下、王妃陛下、王太子殿下、王女殿下のおなーりー。」


 王家の方々が入場される。国王陛下が玉座に座り、全諸侯にお言葉を発す。


「皆の者、面を上げよ。」


 100名以上いる貴族が一斉に顔を上げる。


「これより、皆に重大案件の発表がある。将軍、登壇するように。」

「はっ。」


 将軍クリス=ウォルスターが登壇する。将軍として居たため、軍服に帯剣をしている。この場に居合わせた諸侯は、彼女の後ろ楯になる養子先の発表と感じていた。

 敵対する貴族なら意義を申し立て、自身の派閥なら歓迎し、そして、自分の家が養子先になると信じている者。様々な考えの者が集まっていた。

 ウォルスター将軍が諸侯の方に向くと、宰相が声を上げる。


「今から呼ぶ者たちは、前へ来るように。」


 宰相は20の貴族の名を上げた。その家の中から養子先を選ぶのだと、呼ばれたものは我が一族が将来の王妃の実家になると、一部の者は何故呼ばれたのかわからなかったが……。

 呼ばれた全ての貴族が前に出、その周囲を近衛騎士がそっと囲んだ時、国王が言葉を発した。


「お前たち20名を。」


 近衛騎士は国王の言葉の通り20名を捕らえた。


「へ、陛下!なぜ我々が捕縛されないといけないのですか!」


 捕縛された貴族の一人、バグマン辺境伯は声を上げた。


「この数日、将軍の部下が各貴族の内偵をしておった。今拘束している20の貴族は、国益を減じる行為を行い、私腹を肥やしていたので改易に処する。また、バグマン辺境伯、そなたは帝国と繋がり、我が国に重大な損害を与えかない事を行っていた。よって取り潰しとする。」

「私が何をやったと言うのですか!」

「将軍。」

「はい。辺境伯、貴方への内偵はこの数日ではなくになります。まだ私が前線で奮闘している間からですね。一つ、物資の略取と横流し。前線の兵への食糧などを辺境伯領を通るときに三分の二を懐に入れ、それを帝国へ売りさばいていた。二つ、帝国の間者の誘引。帝国と接するバグマン辺境伯領を通って我が国に帝国の密偵を潜り込ませていた。三つ、王女誘拐の手引き。過去5回にわたりフェリシア王女殿下を帝国に誘拐しようとしていた。全てでしたが。以上三つの反逆行為は国益を損ねるだけではなく、それどころかである。」

「証拠はあるのか!」

「そうですね、なぜあなたの家の金庫に貨幣が大量にあるのか説明できるなら。それもありましたね。あとは、密偵の足取りと物資輸送の辺境伯領での遺失率が他の領を通っていたときの50倍ある理由。殿

「そ、それは、いざというときの蓄えだ。遺失率は、盗賊が多かっただけだろう。密偵や王女殿下が我が領で発見されたなどというのは出鱈目だ!」

「ほう、我が娘が辺境伯領で見つかったのが出鱈目だと?」

「陛下その通りです。もし本当だと言うのならば、その発見した兵を呼んでみてください。」

「なるほどな。のだが、それでもか?」

「王女殿下は当時まだ5歳、場所まではわかりませんでしょう。ですが、その兵が――――、当人?」

「あ、はい。私がその時王女殿下を発見し、その後、王都から王子殿下御一行が来て王女殿下を連れ帰るまで世話をしてました本人です。」


 、そう答えた。


「な、な。」

「何ならその時ついでに捕まえた、持ってきましょうか?たしか、王女殿下が発見されたとき行方不明になっていたあなたの家の執事とメイドでしたか。その時は何者かわからなかったので首だけ塩漬けにして保存していたのですが、まさかあなたの家の執事とメイドとは思いませんでしたね。」

「な……。」

「な、しか言えませんか?なら、10日前に王女殿下が拐われかけたときの侍女は王太子妃候補として王城にいるで紛れ込ませていたとか言った方がいいんですかね?」


 止めに直近の誘拐事件の事までばらされた辺境伯はがっくりと頭を落とした。


「さて、その者達を牢へつなげ。関係各所も押さえろ。」

「そちらの方は既に手配済みです。部下が押さえてます。」

「手が早いな。」

「こういうことは早くやらないと取り逃がしますから。」


 さすがにこの重大案件でざわめくこととなった謁見の間から、悪事を働いた貴族が騎士に連れられ出ていった。

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