第13話 トップ会議(side:国王、王妃、宰相)
国王の執務室
執務室には、国王、王妃、宰相の3人がいた。
「陛下、参ったことになりました。」
話は聞いている。クリス=ウォルスター将軍の実家探しの件だ。
「詳しい説明を。」
「はい、まず、将軍の仕事のほうでですが、我が国の膿を出すと言っていくつかの公爵、伯爵が改易になります。更に、バグマン辺境伯は反逆罪で取り潰さざるおえないでしょう。この改易になった家のいくつかは将軍の後ろ楯になる家候補として手を上げていた家でした。これで、3割の家が脱落しました。」
「なるほど、では残り7割から選ぶのだな。」
「それが……。」
「どうしたのだ?」
「それについては、私から説明を。」
王妃エレナが中庭で起きたお茶会襲撃事件の顛末を説明する。その後を継いで宰相側の情報を添付する。
「この件について、お茶会を主催していた王女殿下、参加者の王太子殿下、ウォルスター将軍からは何も仰りませんでした。ですが、もう一方の当事者であるタチアナ嬢の実家であるルーヴァンス伯爵家より不可解な申し出が相次ぎました。」
「不可解な?」
「はい。まず事件当日、ルーヴァンス伯爵直々に私のところに来られ、タチアナ嬢の王太子妃候補の辞退と、将軍の後ろ楯としての立候補をしていきました。立候補の方はかなりの熱の入れようで高い本気度を窺えました。」
「高い本気度だと?」
「はい、将軍個人に恩があり、その縁があるからと、候補としてタチアナ嬢がいたことが優位に働くなど熱弁をはなっていらっしゃいました。」
「ふむ、それならばクリス嬢の引き受け先はルーヴァンス伯爵家で決まりだな。タチアナ嬢には良家との婚姻を考えてやろう。」
「ところが、そうもいかないのです。」
「なにっ?」
「その翌日、私宛に手紙が送られてきまして、立候補の取り下げと、領地経営に専念するため王都を離れたい旨と、王女殿下への謝罪文が書かれておりました。」
「なんだと!」
「あと、これは噂なのですが、手紙が送られてくる直前、ルーヴァンス伯爵が将軍とお会いしているとの話が伝わっております。この為、将軍がすこしでも気分を害することがあったら、いくら後ろ楯であろうともひどい目に遭い取り潰されるとの噂がたち、更には将軍自身の手柄としての改易の噂もあり、将軍への恐怖で残った全ての家が立候補を取り下げました。」
「……本当か?」
「はい、全て取り下げです。更に、王太子妃候補の方々も、タチアナ嬢の失態と脱落、そして実家の改易の影響で半数が辞退となっております。」
「……そうか。だが、この数日での実績を考えるとエルヴィンの嫁には勿体ない気もするな。」
「ですが、王子はエルヴィン様しかおられません。」
「だが、実家が男爵家では王家には迎え入れられないぞ。」
執務室は静まり返る。
「グランツ。」
「なんでしょう。」
「お前が養女に迎え入れるのはどうだ?」
「陛下、先日も問題あると言いました。宰相家から王家に輿入れはできません。」
「だよな~。」
頭を抱える国王と宰相。
「そうだわ、これならどうでしょう?」
王妃があるアイデアを二人に伝えると……。
「クリスちゃんはいい娘ですし、どうでしょう?」
「……確かに、家の格は問題になりませんな。」
「それに、もう一つは問題にすらならない。いいじゃないか?」
「でも、これで決まりと、宣言することになりかねませんが……。」
「それは、彼女に継承権を与えるのはどうだ?」
「それは良くないですな。前例がないです。」
「では、どうする?」
「発表の時に腰抜けな上級貴族がだらしないせいで、王家が引き受けざるおえなかったと宣言するのはどうでしょう?」
「なるほど、確かにそれなら貴族どもの牽制にもなるしな。」
「そうですな。では、このように進めましょう。」
「では、頼む。」
こうして、ラドファライシス王国のトップ会議は解決の糸口を見つけ終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます