第10話 クリスリッタ商会からの手紙(side:ルーヴァンス伯爵)
翌朝、ルーヴァンス伯爵邸
自室謹慎になっているタチアナは、侍女に朝食を持ってきてもらうのを待っていた。
「タチアナ!非常にまずいことになった……。」
「どうしましたのお父様、こんな朝早くに。」
「昨日の夜、クリスリッタ商会から手紙が来ていた。」
「クリスリッタ商会からですか。」
「ああ、内容はこうだ――――
拝啓 ルーヴァンス伯爵卿
ますます寒くなってきます今日この頃いかがお過ごしでしょうか。本日は急にお手紙をお送りすることをお許しください。
さて、本日お手紙をお送りいたしましたのは、先日終わった戦争に参加した伯爵領に帰ってくる兵の報奨金が不足するのではとの思いでのことです。金貨500枚を用意しております。滞りなく報奨金が払われることを期待しております。
ご領地の発展をお祈りいたします。
かしこ
クリスリッタ商会会長 クリス=ウォルスター
追伸
先日、宮中にて伯爵のご令嬢が王女殿下のお茶会に乱入されております。王太子殿下が内々で処理をしておりますので、下手に早まって、軽率な行為を起こさないようご留意ください。
「お前、何をしでかした?」
「えっ、ですから、生意気な男爵令嬢にお小言を言って差し上げただけです。」
「――――聞きたいのは、”何時、どこで”やったのかだ!」
「ひっ、えっ、えーっと……、確か早めにお城に行って、エルヴィン様がいらっしゃると聞いた中庭に行ったときですわ。」
「その時、王女殿下がお茶会を開いておったそうだ。」
「えっ!?王女殿下?」
「ああ、王女殿下のお茶会だ。」
「……王女殿下がいらっしゃったのですか?」
「――――っ!知らなかったのか?」
「そう言えば、あの男爵令嬢が言っていた気もしますが……。」
「……タチアナ、お前を伯爵家から追放することになるかもしれん。」
「……な、なぜですの?」
「それはな、お前が王子と王女――――この国の全ての王位継承者の気分を害した可能性がある。その場合、我が伯爵家を存続させるため、お前を捨てざるおえない。」
「なっ……」
「私はこれより登城し、陛下に謝罪をせねばならん。すまないが沙汰が降りるまで部屋でじっとしておいてくれ。頼む。」
「……お父様。」
「できる限りのことはするつもりだが、どうにもならぬこともある。最善は尽くす。だから部屋で待っておれ。」
「お父様、わかりました。よろしくお願いします。」
ルーヴァンス伯爵は娘のため最善は尽くすつもりで城へ向かった……。
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