第7話 王太子
しばらく、お茶を楽しんでいると、
「フェリス、邪魔するよ。」
「あ、お兄さま。ようこそ。こちらがウォルスター将軍です。」
「クリス=ウォルスターです。」
婚約者候補とはいえ昨日決まったばかりなので、一応最低限の礼はおこなう。
「エルヴィン=アド=ラドファライシスだ。婚約者候補殿。」
王子はそう言うと、私を観察するように眺める。
「直接会うのは初めてだな、いきなりで不躾だ―」
「初めてじゃないですよ。」
私の返しにポカンとする王子。
「公式の場を含めて直接会うのは初めてじゃないです。」
フリーズする王子と、『あーやっちゃった』て顔の王女と侍女たち、そして遠い目をする王子の護衛の近衛騎士。
「えーと、どこで会いましたっけ?」
「一応私が将軍であなたは王太子ですよ。当然軍議の時は出席してますよ。まあ、将軍になる前から”公式”にお会いしてますね。」
「将軍になる前からですか?あなたのような方なら覚えているはずですが……。」
本気で思い出せないみたい。ちょっと後押しするか。
「一つだけヒントを。」
王女を指差す。
「えっ???」
おい、これでも分からないのか。
「はー、じゃあ、答えを言います。この子が拐われる度に何故か私が助ける側で関わってます。全部。」
ため息をついて、王女を指差しながら言う。
顔を赤くする王女、逆に青くなる王子と近衛騎士、笑いを堪える侍女たち……って、失礼だな、あんたら。
「こ、これは失礼した。フェリスを何度も助けて……、記憶にあるかぎり何回かあるんだが……。」
「公式に私か助けたのは3回。うち2回は将軍になる前。他に2回は私の関係の筋が助けて私が繋ぎを取ったことになっている。」
「……僕の記憶にあるのは、5年前に辺境で見つかったのと、4年前に商会に助けられたのと、その翌月に王都で、あと2年前に前線から救出されたの4回だけど……。」
「それと、昨日。」
「あー、それで5回か、すごい確率だな。」
「もう、私に会うために拐われたのを疑うレベルね。」
「確かに。もう拐われないよう完璧に警護してもらうよ。」
「まー、警護案を出すのはこっちの仕事だけどね。」
「だが、これだけ拐われるとなると、近衛騎士を廃止して軍の護衛に任せた方がいいんではないか?」
「いえ、近衛騎士は”見せる”護衛ですから必要です。むしろ近衛がいることができない場面を考えるべきかと。王女の護衛なら侍女に紛れ込ませた方が誘拐には有効かもしれません。同性ならどこにでもついて行けますからね。」
後ろの近衛騎士の顔色が青くなったり赤くなったりして面白い。彼らが行う警護の話を目の前でしてるのが、次期国王とその王妃候補兼現軍のトップだからどういうシフトになるか気が気でないよね~。
「ともかく、妹を何回も助けていただき感謝する。」
「どういたしまして。さあ、お茶会ですから辛気臭い話は終わりにして、楽しみましょう。」
和やかなムードに戻し、お茶会を再開しようとした時。
「なんですの、たかだか男爵の小娘程度が王子様と一緒にいるなんて。恥を知りなさい!」
意味のわからない、いちゃもんが飛んできた……。
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