第6話 拐われやすい王女

 1時過ぎ、お茶会会場である中庭に行ってみると、すでに王女様と侍女で準備が整っていた。


「姫様、将軍閣下が来られました。」

「お姉様が!すぐ行きます。」

「もう来てるから大丈夫よ。」


 近くまで来ていたので、慌てないように制止する。


「お姉様!ようこそいらっしゃいました!」


 私は、臣下の礼を行いながら


「王女殿下、本日はお茶会にお誘いいただきありがとうございます。政務の合間のため軍服にて参加となりますことをお許しください。」

「え……ええ、将軍の軍服は正装ですので問題はありません。ですが、今回は公的な茶会ではないので格式張ったことはしなくて構いません。」

「じゃあ、そうさせてもらうわね。」


 東屋に作られたお茶会の椅子に座る。


「ところで、お姉様は今日はいつまでいれるんですか?」

「うーん、一通り終わったから、が届く、夕方までかな。」

「あるものって?」

「ひ・み・つ。と言うか、機密だね。国家に関わるね。」

「あー、それだと聞くわけにはいきませんね。」

「そういうこと。耳が多い状況で言うわけにはいかないからね。」


 そう言って、紅茶に口をつける。


「そういえば、お姉様と会うのは久しぶりですね。」

「そうね。まー私から言わせてもらうなら、いい加減を直したらどうなの。」

「えー。だって、ああいう時は侍女についていくものでしょ?」

「一般人の誘導は侍女の仕事だけど、王家のあなたの場合は避難誘導するのは近衛騎士の仕事よ、要人警護の必要があるから。」

「えっ、そうなんですか?『後で警護の人が来るので先に逃げてください』と言われたのですが……。」

「……たぶんそれ、と言う字にのルビがふってあると思う。」


 ああ、だからこの子、簡単に拐われるんだ――と、思わず納得してしまった。昨日の件でだからなあ、拐われるの。



1回目、5年前

 軍に入隊してすぐの頃、辺境で哨戒中に怪しい馬車を見つける。馬車の中に5才くらいの女の子がいて名前を聞くと王女と名乗る。慌てて王都に照会を掛けると、数日後、本物かもしれないとの返事が。年が近く、同性の私が近衛が侍女と王子を連れて来るまで面倒を見る。


2回目、4年半前

 半年前の一件で階級が上がり最年少で中隊を任された私は、休暇で王都に戻っていた。下町でどこか見覚えのある少女が明らかに怪しい男に連れられて歩いていた。うん、王女様だね、あれ。とりあえず男をしばいて王女様を救出。王城の門兵に王女を『迷子』と言うことにしてお帰りいただいた。


3回目、4年前

 色々物資が滞っていたので商会を作り、輸送業をしていたら、代行輸送していた樽の中から王女様発見。そして、その樽の依頼主、依頼先合わせて一網打尽。商会の大幅な資金力アップになり、多方面に展開することに。


4回目、3回目のひと月後

 結果を出し中佐になって帰省中、実家の窓から侍女が怪しい男に眠っている王女様を引き渡しているところを偶然目撃。もちろん引っ捕らえて救助。1階級昇進した。


5回目、2年前

 将軍になり全軍を指揮している私のところに、王女様現れる。敵軍の不審な動きに先手を打って置いていた部隊が救出。判断を仰ぐために司令部まで連れてきた。さすがに5度目なら私が覚えてるので、速攻で護衛をつけて王都に連れていく。


6回目、昨日――――


 なんだか、王女様拐われる→私が見つけるまたは報告を受ける、といったコンボが発生してるな。



「お姉様にはいつも救っていただいて……」

から拐われてるんじゃないでしょうね!」


 不敬だが、思わずほっぺを左右に引っ張ってしまう。


「いひゃいいひゃいいひゃい。」


 ほっぺを放す。


「そんなわけないですよ~。だって、拐われてもお姉様に助けてもらえるとは限らないですよ~。」


 確かに5回目は私が直接発見したわけじゃないし、そもそも、6回目は私も拉致現場にいた。

 まあ、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る