第3話 王女の願いと報告
本日2話目
=========================================
「あ、あのっ!」
「はい、どうされました?」
事後処理を部下に指示し終わると、王女様から声がかかった。
「うぉ、ウォルスター将軍、助けていただきありがとうございます!」
頭を下げ礼を言う王女、だけど……。
「いえ、当然のことをしただけですよ。」
「ですが。」
「だって、もうすぐ『義妹』になるんですから、『義姉』として義妹を護るのは当然でしょ。」
「えっ、あっ、そうですね。」
真っ赤になってモジモジしだす王女。
「あ、あの。」
「なんでしょう?」
「お姉様と呼んでいいですか!」
私は苦笑しながら、王女様の頭を撫でつつ
「公的な場では問題あると思いますが、義姉になる予定ですから私的な場でしたら。まあ、エルヴィン様と結婚できなかったら難しくなるでしょうが……。」
「なら、私はお姉様をお兄様と結婚できるよう、協力します!」
「それは頼もしいですね。さあフェリシア様、会場へ戻りましょう。すべて片付いていますので。」
先程外したスカートを元に戻し、王女様をエスコートして会場に戻った。
会場では大捕物があったのでざわついていたが、私が王女と一緒に戻ってきたのを見て、安堵の声と、別の意味のため息とが聞こえた。一応覚えておく。
(今捕まえても効率的じゃないしね。)
「こんな状況なのに将軍がこの場を離れているなんて、どういうつもりかしら。」
(おお、声のでかい令嬢がいるなあ。伝令係に使えるかな?でも空気読めないんじゃ使えないかも。)
そんなことを考えていると、王女が両親の元に駆け寄っていく。
「お父様、お母様、拐われそうになっていたところを、おね……ウォルスター将軍が助けてくださいました。」
「なんだと!」
その声に反応し、視線が私に向けられる。
「将軍、それは本当か?」
静まり返った大広間で一人注目を浴びる。将軍として注目を浴びるのは慣れてるけど、四方八方はなかったなあ。
「ええ、襲撃が発生した時、姫様が侍女に連れられ大広間を離れようとしているのを見ました。近衛も付けずに出ていくのを見て不審に思い、また、ここには近衛も軍の精鋭もおりましたので、対処可能の判断し、数名引き連れ姫様の後を追いました。姫様に声を掛けたところ、振り返った姫様にナイフを突きつけようとしていたため、これを排除、拘束いたしました。現在、配下の者に背後関係を洗うよう尋問するよう手配済みです。わかり次第ご報告させていただきます。」
静まり返ったままの大広間。戦勝記念の祝いの席での事件、しかも、王女誘拐未遂も発生している。さすがにどうするべきか難しい判断だろう。
「では問おう。すでに賊は捕縛したのか?」
「はっ、実行犯はすべて捕縛済みです。」
「ならば、再開しても問題はあるまい。」
「はい、問題ありません。」
「では、再開しよう。ウォルスター将軍には、礼を言おう。また後日、娘を救ってくれた褒美を与える。」
「はっ!ありがたき幸せ。」
臣下の礼を行い、宴は再開する。
国王陛下の宣言で再開された宴、当然ながら話の中心は私だ。なにせ今出来たばかりの新鮮な話題の張本人だからな。
「ウォルスター将軍。」
「はい、お呼びでしょうか?」
王女フェリシアが人垣を割って近づいてこられた。
「先程は助けていただきありがとうございます。」
「いえ、王女様も無事でなによりです。」
「お礼といったはなんですが、近いうちにお茶会にお誘いしたいと思っています。よろしいでしょうか?」
「ええ、時間の都合がつけば喜んで。将軍職をやっているのでうまく時間が空いてくれればいいのですが……。」
「そうですね……、では、こちらの方が時間を合わせますわ。ぜひいらしてください。」
「はい、それならば必ず。」
「ではまた。」
王女が話しかけることを邪魔するものはいない。だが、王女がお茶会に誘うことを公言するのは大きなことであった。色々な令嬢からお茶会のお誘いが相次ぐ。まあ、将軍をやっているので、出れるかわからないと返せるので楽だけど。
そんなこんなで、戦勝記念の宴は終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます