第2話 舞踏会での事件

本日1話目

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 褒賞の授与も終え、舞踏会が始まる。軍の女性陣はお色直しでドレスに着替える組と、そのまま軍の正装でいる組に別れた。

 舞踏会は上級貴族もしくは要職に就いているものとその家族のみであった。将軍であるクリスも元々下級貴族、令嬢としての基本は学んでいる。こういう社交の場でも、浮かずに立ち回れるはずだった……。

 168㎝の平均よりやや高い身長と、素晴らしいドレスにつけられた。浮かないはずなかった。そして、目立たないはずもなかった。

 彼女に近づくのは軍関係者や、あわよくば甘い汁を吸おうとする三流貴族ばかりであった。


(なんとか王子さまに会えないかしら、この後の事がありますし。)


 などと考えながら、軽食を取っていると――――。


(おっと、襲撃ね。まだ伝えてないのに……。)


 すぐ側に侍る《太刀持ち》の兵に目で合図を送り、共に王女の方に向かうことにする。


(王子さまに傷でもつけたら、どうしてやろうかしら。)


 王子の側に”部下”がいるのを確認し、王女を探す。少し離れた場所から侍女に連れて大広間を離れようとしていた。


「回り込むわ。」


 近くの扉から出て、王女が出た扉の方に駆け出しながら、近くの””に手信号で合図を出す。気づいた””はすぐ””散開していく。


 王女の姿が見えるところへ追い付く。


「フェリシア様、どちらへ行かれるのですか?」


 将軍として鍛え上げた声を張り上げ、王女に近づく。王女の隣にいる侍女は驚いた顔をしている――――黒だな。


「将軍様、兄上が襲われたと聞いて侍女にあの場から退避するよういわれ――。」


 こちらに気が付き、駆け寄ろうとする王女にたいし、全力で加速し、王女との間に剣を差し込む。


「ウォルスター将軍!?」


 後ろを振り向いた王女が見たものは、剣により防がれたナイフであった。


「こちらに!」


 ナイフを弾き、王女を後ろに護る。


「やはり本命はこっちだったみたいね。」


 スカート部分を触ると、スカート部分が一部外れ短くなる。のためあらかじめ作っておいた機構だ。


「さて、貴女はどこに所属の侍女かしら。その家が帝国と繋がってるのか確認しなくちゃならないからね。」


 侍女はピーと指笛を鳴らす。


「おっと、そっちだったか。うちの国の侍女の管理もザルだなぁ。」


 ちょっと困った顔をしながら、相手の出方をうかがう。侍女はいつまで経っても来ない援軍に苛立ち始める。


「ああ、たぶん貴女以外全員捕らえられたんじゃない?鼠が沢山いたから片っ端から片付けるよう言ったからね。」


「チッ!」


 後ろに王女を護りながらなら勝ち目があると見たのか、侍女はナイフで襲ってくる。


「なめんな!」


 ナイフを剣で絡め飛ばし、当て身を喰らわし無力化する。圧倒的な実力差があるのであっさり捕まえた。

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