SK-25

「2番機射出を急げ!」

 指令デッキから通信機に檄が飛ぶ。

「射出用意! 発射!」

 ドンと音を立てて駐機デッキから小型戦闘機P-1”ピーターラビット”が射出される。


 星域第3惑星系帝国領”エンタープラネット”、地球に酷似した惑星で8割を純水、2割を藻を主体とした陸に見える緑の大地を築いている。帝国はここの占有を一方的に主張し、防衛施設と防衛艦隊を派遣した。ここを古来の領土と主張する公国が対立、公国同盟のトライアングル同盟と帝国の戦争が始まった。このSK-25は帝国が独自開発した小型戦闘機を2機腹に抱えているフリゲート空母という新しい艦種だ。SKはショート、キャリアー。である。そんなSKシリーズは現在35万隻が帝国の保有数で数多くの戦線に配備されている。載せている艦載機は任務ごとに偵察、雷撃、要撃、などの役割を供えた機が駐機している。P-1は主に雷撃を担当し、20ミリ噴進魚雷を抱え、敵艦に肉薄、近距離より雷撃を加え打撃を与えることを主任務としている。現在このエンタープラネットのある恒星”オメガ”の第6惑星である”ピンキ”はトライアングル同盟の攻撃を受けている。巡洋艦”テラスタル”を主軸とした第128雷戦隊が駐屯しており、警備にあたっていたが、突如長距離ワープによって無数の敵艦が大挙として攻めてきた。

「敵の数は?」

 テラスタル艦長は作戦参謀に聞く。

「それが…数およそ300、まだこの後もワープアウトが多数確認されています」

「ふむ、数で負けるな。敵主力は?」

「現状は駆逐がほとんどです。フリゲートなどの小型艦が多数ワープアウト、戦闘を開始、第3SK艦隊が戦闘中です」

 SK-25も第3SK艦隊に配属されている。艦載機を射出して身軽になったので前線に突撃する。SK-20番型は艦載機機能のほかに突撃電磁加速砲と6門の噴進魚雷を携えている。

「正面砲雷撃戦よーい」

「敵機270度、攻撃機です! 約200!」

「対空戦闘!」

 正面を向いていた下方にある砲が200、対空機銃の死角から突入してくる。SK型の対空配置だと200~230の方位は死角になってしまうのが数少ない欠点の一つである。しかし、熟練の乗員は電磁加速砲で敵機を落とすこともある。装填されている砲弾が1発発射され宙に消えていく。旋回中に砲弾の入れ替えを行ったのだ。砲が変形し、速射砲になる。1分間に20発のレートで55ミリの砲弾を打ち出す。

「うてぇい!」

 ドン ドン ドン

とオレンジ色に輝く砲弾が敵機へ向かう回避機動を取った敵機を対空機銃が追いかける。砲弾は一定距離離れると破裂する。曳光榴弾という特殊な帝国の対空専用砲弾だった。死角から外れればあとは対空機銃でどうにでもなる。艦長はそう判断し次の指示を出す。

「艦載機の状態は?」

「は、現在2番機が雷撃成功、敵戦闘機に追われながらも帰投中です」

「丁度対空砲弾だ、援護してやろうじゃないか。距離は?」

「15000です」

「では信管12000~10000に信管乱数を設定、味方に当てるなよ? 砲術長、発射は任せる」

 砲術長は敬礼し、指令デッキから射撃システムデッキへと降りる。

「砲弾の調整は聞いた通りだ。あとは砲角度を5度ずつそらすんだ。散布域を広くしろ」

「撃て!」

上下2門ずつ合計4門の砲が一斉に射撃をはじめ弾幕を張る。遠くから見るとそれはまるで花火大会の連続打ち上げのような光景だった。

 

 しかし、彼らはまだ気づくはずもなかった。これから出現する巨大な船を。

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