最終列車

 ホームに1両の列車が到着する。ホームには車掌のアナウンスが響き渡る。田舎の夜中の駅に乗り込む人はいない、数人がアナウンスを後ろに階段を下りていく。

「蓬莱~蓬莱~。足元に注意ください、この列車は最終列車です。ホームには残らないようお願いいたします」

 一人の少女が車掌を見つめる。車掌は振り返らない、出発までの数分彼女の視線は車掌にくぎ付けになっている。車掌はただただ前を見て出発まで待機する。駅員が出発を知らせるライトを点灯させる。車掌はブザーで運転手に出発を伝え、ドアを閉める。動き出す電車を少女は見つめる。車掌は気にも留めていないようだ。

 列車が出発した後、駅員がホームに誰も残っていないことを確認し駅の電気を消灯する。少女はただホーム端にたたずんでいた。


 その日の朝方、貨物列車が緊急停止をした。場所は蓬莱駅下り線のホーム、運転手の証言では少女が線路に飛び降りてきたという。しかし実際に少女は飛び降りたところには存在せず、運転手の疲労だと断定された。彼の同僚も同情の言葉を述べたがただ一人、親友の車掌だけは、その少女の存在を肯定したという。

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