思い人

ねぇ、ほかの女と連絡しないって約束したよね?__

 そういいながら彼女はゆらゆらと私を部屋の角に追い込む。彼女は手に何か持っているが暗くてよく見えない。長方形でギラギラしているところから大体は予想ができている。


ね、ねぇ、私たち今なら元の関係に戻れるよね? お願いだから戻ろ……若?__

 私がそうかすれた声で彼女の名前を呼ぶと、彼女は一瞬停止するものの、カチカチと手に握った何かが動く音が聞こえる。


ま、まままってよ! なんで⁉こんなのって__

 若はゆらゆらと追い詰めた自分の彼女を…………

さよなら、真頼_____

 真頼の目が最後にはっきりととらえたのは夜の満月に映った二人で買ったカッターナイフと自分の血で服に赤化粧をまとう彼女の姿だった。

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