主人公と全然関係のない敵対勢力同士のバトルとか好きな人用の小説

🦍💫 VS 🐛🌂 4/6🥺

🥺

「『いわれなきリベンジ』をぶっ放します！」

ウチがそう言うと兵士さんはみんな大騒ぎ、四方八方に駆け出していった。

自分の力が認められたような気がして、ちょっと得意になってしまう。

ウチの必殺技その１、正式名称『いわれなきリベンジ』。

この技を放つときは、事前にみんなに教えなくちゃいけない。

敵も味方も全員巻き込まれちゃう無差別技、魔王っぽくてとってもいい。

後は技を出すまでちょっと待つ。

意気揚々と武器庫へ歩いていると、あちこちで兵士さんが叫んでいるのが聞こえてくる。

「必殺技だーーーッッッ！！逃げろ！！逃げろーーーッッ！！」

「大切なものだけ持って避難だ！オロチマリアちゃんが激おこだぞ！八つ当たりだぞ！！」

「普通に殴って倒せよクソ魔王がよお…！！」

「俺らで倒しちまった方が早えんじゃねの？」

耳が真っ赤になる。

兵士さん達の言う通りなのだ。

ウチが直に殴っちゃえば全部終わるんだけど…。

だけど…。

あのすっごいキモイやつの形を思い出して、ウチはまた少しチビッてしまう。

もう見たくない、会いたくもない。

タンスの後ろに隠れたゴキブリを、タンスごとグチャグチャに壊しちゃうのに似てる。

しばらく夜におトイレいけそうにない。

なんでこんなことになっちゃったんだろ…、今日はみんなでプリンを作る約束もしていたのに…。バケツを使ったおっきなプリン…。

ウチは深いため息をついた。

🐛

（こんなに気づかれないもんなんだね…）

コエダメが小声でつぶやく。

─

コラエライの伴侶「メヌエッタ」は、同名の友人から譲り受けた雨傘だ。

一見何の変哲もない傘に見えるが、戦闘妖精と契りを結んだ道具は、持ち主の実力に比例し不可思議な武装がなされる。

戦闘妖精史始まって以来の天才と謡われたコラエライの実力は、ただの雨傘は恐ろしい兵器へと昇華させた。

・まずは【傘地】

水はもちろん、油や酸、果ては砲弾やマグマまではじき返す。黴も生えない。

・傘を支える【骨】

戦車に踏まれてもびくともしない耐久性を誇る。

・傘の支柱、【中棒】

日本刀を打ち込まれても傷一つ付かない硬度、そしてゴムが如き柔軟性。

・先端、【石突き】

普段は丸みを帯び、一たび戦闘に入ると切っ先を鋭く尖らせ、貫く。

そしてインパクトの際に高速回転し、螺旋の入った一撃を相手に見舞うのだ。

しかし、この傘の最大の特性は、閉じた時にこそ発揮される。

メヌエッタの隠し特性、『隠れ傘』。

メヌエッタが閉じられた時、その傘の内部に潜むことが出来るのだ。

傘内部は不思議な空間が広がり、外界から完全に隔離され、体重も消える。

体は自由に出し入れ可能なため、顔だけだして偵察したり、足だけ出して移動することも可能。

コラエライは小休止を取るときや奇襲を仕掛ける時は、隠れ傘を活用した。

現在、コラエライ、チーソン両名は、体をすっかり傘の中に収納させていた。

そして、表面の傘地にコエダメが張り付き、体表色を変化させてカメレオンが如く擬態をする。

それらの合わせ技により、正面からだと完全に背景と同化し、完璧な潜伏の実現に成功した。

姿は見えずとも臭いで勘づいたコボルト兵は、傘内部に引きずり込み、無言の内に“処理”。

既に何匹かのコボルト兵を始末しているが、騒ぎにはなっていない。

（ていうかどうなってるの、この傘…。物理法則完全に無視してるよね。

魔法少女は変身出来るし、勇者もなんか色々爆発させてくるし…。

オレなんてただのデカいナメクジで、完全に場違いだよなぁ）

愚痴るように呟くコエダメにコラエライが返す。

（コエダメ殿は十分…、といいますか、かなりお強いと思いますが…。

目玉をくり抜いて脳みそに侵入などの攻撃は如何でしょう？）

（そんなグロいこと、絶対しないからね！！！）

（それにしてもさっきからワンコ達が大騒ぎだね）

「魔王です！魔王です！魔王が接近し─

（ラジオのボリューム下げて下げて…！！）

（『いわれなきリベンジ』とは、一体どんな技でございましょう…？）

「同志コラエライ、情報にございません」

（シー！無線のボリュームも落としてよお…！）

「？」

魔王オロチマリアが声に反応して一瞬振り返るが、誰もいないので首をかしげてまた歩き出した。

現在傘の一行は、オロチマリアのすぐ後ろを尾行しているのだった。

魔王を見つけた時、即攻撃しようとしたコラエライを止めたのは、チーソンだった。

（必殺技をするのなら、それを放つ瞬間に一番隙ができる）

相手の最も攻撃して欲しくないタイミングで仕掛ける。

「騙し討ちのアイドル」の二つ名は伊達ではなかった。

💫

相手側は、次は必ず奇襲で来るだろう…。誠は確信していた。

ゴリラの図体は目立ちすぎていて隠密には向かない。

どうしても迎え撃つ形となってしまうのである。

一方、未変態のティティはただの幼児に過ぎず、非常に危うい状態でもある。

ティティは先ほどから、ゴリラの胸にしがみ付いて離れず、胸元には僕。

精神は安定しきっており、変態しようがない状況であった。

「絶対にティティを守って欲しいんだ」

僕はゴリラに伝える。

「それと、魔王には手を出さないで欲しい。

まず当面の敵は、強虫と駆け落ちだ。

無事終われば、その後いくらでも、魔王討伐には協力するから」

口をすっぱくして伝えるのだが、ゴリラは聞いているのかいないのか。尻など掻いてのしのしと歩いていく。

僕としては、もうゴリラを信じるしかない。

不本意ながら。

向こうから歩いて来る人影を見止める。

ゴリラもそれに気づいたようだが、足を止めない。

むしろ足を速め、駆け出す。

どうしたゴリラ！？

そして、やおら胸元のティティを引っ掴むと大きく振りかぶって、力いっぱい人影へ投げつけた。

同時にけたたましい吠え声を上げながら、激しくその胸を叩きだす。

どうしちゃったゴリラ？？！！

🥺

急に前方から現れたゴリラがこちらに何かを投げつけたので、オロチマリアの体は恐怖で強張ってしまう。

そして投げつけられたものの正体が幼い女の子であることを見て、ホッと胸を撫で下ろす。先程の×××××がトラウマになり、何かを投げつけられることに異常な恐怖を感じてしまうオロチマリアである。

投げつけられた少女はオロチマリアを越え、少し後ろで大爆発を起こした。

思わず振り返ると、唐突に何もない空間からが人間が二人飛び出してきたので、また動揺する。

これって魔法？！

前方のゴリラ。後方の2人。

あっという間に四方を囲まれ、オロチマリアはすっかり混乱してしまう。

前からゴリラが雄たけびを上げ、ドラミングを始める。

後ろから傘をもった女が殺気を放ちながら突進してくる。

なんかしなくちゃなんかしなくちゃ…！！

不測の事態にはめっぽう弱い魔王である。

気持ちばかりが焦るがとにかく目についたものをぶん殴ろうと、強く拳を固めた。

🐛

激しい光と爆発に、僕らは傘から弾き飛ばされる。

これは、何度か確認したゴリラの魔法、『獣ヶ原』だ。

飛んできた幼い少女が『魔法少女の元』だと判断し、僕はすかさずその首元に蹴りを放った。

いたいけな少女に殺意を向けられるかが少し心配だったが､それは全くの杞憂だった。雑念は一切混じらず、思った通りの動きが出来る自分に逆に驚いてしまう。

思っている以上に、僕は非情なのかも知れない。

「ティティープリグゲッッッ！！」

妙な言葉を口走った少女は、喉を突かれて言葉に詰まる。

読み通りだ！

プリキュアだっておジャ魔女だって、僕の知る限りのほとんどの魔法少女は、変身時に呪文や定型の決まり文句を唱える。

つまり発声器官さえ潰してしまえば、変身の阻止は恐らく可能…！

しかし、大きな誤算もあった。

殺すつもりの蹴りが、ほとんど通じていないのだ。

なんだこの感触は？子どもの、いや、人間の耐久力じゃない。

変身しなくても、体は十分化け物ということなのか？

一瞬怯んだ様子を見せた少女はすぐに体勢を立て直し、瞬時に距離をつめ、こちらに拳を放ってきた。

コエダメが素早く僕の体を守るが

ッッッミシミシ！

鋼鉄の如き耐久を誇るコエダメの体から、衝撃で軋む音が鳴る。

こんな音、聞いたことがない。

どうしよう。

強い。

💫

『獣ヶ原』の強化がなければ、ティティは最初の一撃で事切れていただろう。

無事に攻撃を耐えたティティに、僕はホッと胸を撫で下ろす。

しかし、状況はかなり悪かった。

迷わずティティの喉元を狙ってきたところを見ると、相手は変態条件の１つである「呪文」に気付いている。

このまま獣ヶ原の効果が切れるまで喉を責められ続ければ、終わりだ。

ゴリラは魔王と傘の相手をしていて、助けを望めそうにもない…！

ティティ！逃げろ！！

僕が叫ぶ前に、なんとあの子は拳を握り相手の前に躍り出た。

─

数々の名うてのゾワップラーを沈めてきた歴戦の覇者。チーソン。

火器に身を包む戦場の殿方を屠り続けた戦闘妖精。コラエライ。

人々を率い、強大な魔族共と渡り合った伝説の勇者。ゴリラ。

しかし、最も過酷で、最も恐ろしく、最も冒涜的な敵と戦い続けた戦士は、意外にもこの少女であった。

変態少女プリティーティティー、4歳。

相手取った×××××の数、実に126体。

通算成績、126勝0敗。

幾多もの死線を乗り越えてきた少女の動きは、4歳のそれではない。

「まことちゃんも、ごりらさんも…」

積み重ねられた、異形との戦闘経験。

「わたしが守るもん！！！！」

加えて獣ヶ原、更にはドラミングによる超強化。

狩られる者では決してない。

生身のままでも、戦士たる実力は十分すぎるほどにあった。

チーソンの隙のない苛烈な猛攻。そして、その体の死角から放たれるコエダメの奇襲。

数多のゾワップラーをマットに沈めてきた立体的乱舞のその全てが、齢4つの少女に叩き落とされている。

誠は、開いた口が塞がらない。

この姉妹にとって、敵とは常に常軌を逸した化け物であり、対人間は全く未知のことだったが─

相手の少年の動きも決して悪くはない。

むしろ化け物じみていると言ってもいいだろう。

ただ、それを持ってしても。

まるで止まって見える。

×××××はどれも、地球上のいかなる生物からも逸脱した、常人では想像もつかないおぞましい動きをする、

それに比べればナメクジの奇襲など、児戯に等しかった。

健気にも身を挺しチーソンを庇うコエダメの動きが、徐々に鈍くなっていく。

そして、とうとう力尽きたのか、体から落下し少年のボディががら空きになった。

間髪入れず、ティティの掌底がチーソンを貫く。

「ッッッぐう！！！」

チーソンの体が宙に浮き、そしてその落下と同時に、すさまじい音が後方から聞こえた。

ビシャアッッッッッッッッッッ！！！！！！！！！！

夥しい量の赤い液体が、ティティの体に降り注ぐ。

まるでイチゴのように真っ赤になるティティ。

そしてその視線の先には、ゴリラがいた。

ゴリラはもう眼差しをこちらに向けることはない。

何故ならゴリラから、その上半身が消失していたからだ。

🌂

拳一振りでございました。

感慨もなく、思惑もなく、駆け引きもなく、

魔王様が雑に放った一発の拳─

勇者様の上半身は、それで消し飛びあそばされました。

わたくしは、堪え切れませんでした。

堪え切れずに、はしたなくも満面の笑みを浮かべてしまいます。

ああいけない！今は真剣な戦争の最中…。

しかしながら目の前のお方は、魔王様は、わたくしが待ち望んでいた宿敵。

この生に決着をつけるかもしれないお相手。

わたくしの生は、今日この日。存分に燃え上がる為に授かったも同然のことにございます。

メヌエッタ、そしてチーソン殿！！

共に参りましょう！

魂震える強敵とのぶつかり合いこそ、最高の愉悦にございます。

しかし、魔王様は呆気にとられたようなお顔をなさって、わたくしの後ろをご覧になっておられます。そして

「ッッッッップイギィアアアアアアアアアアアアアアアアア！！！！！！！！！！！」

とてつもない声量で悲鳴を上げられ、全力疾走で駆け出されました。

わたくしとは逆方向へ。

？？？これは？

まさか魔王様ともあろう御方が。

敗走など。

その時。私の耳に。聞いたことのある声が。入りました。

「…ぁ……」

わたくしは存じております。

この奇怪な、この世のものとも思えないおぞましい叫び声。

耳を、鼓膜を脳を、陵辱される感触。

吐き気を堪えながら、声の方を振り返ります。

そして。

「おねえさん！！！！」

チーソン殿の叫び声が、どこか遠くから聞こえてまいります。

しかしわたくしの体は思うように動いてくれません。

そこには、なんとも形容のできない世にもおぞましい×××××が、蠢いておりました。

🐛

舐めてかかっていたわけじゃない。むしろ、今までのどの試合よりも、死力を尽くしたと思う。

だけど少女はまるで赤子をあやすかのように軽々と、かわし、弾き、いなしていく。

そしてコエダメが落ちて無防備になった僕の腹部に、少女の掌がめり込む。

内臓をシェイクされるような痛み。死を覚悟したその瞬間だった。

ビシャアッッッッッッッッッッ！！！！！！！！！！

バケツから泥をぶちまけたような音が響き、魔法少女が追撃を止め、立ち尽くした。

そしてその眼前を見つめ、潰れた声で呪いの言葉を呟く。

「ディディーブリジィーガンゴスギー」

瞬間、魔法少女の全身は肉色に光り、その頭はザクロのように裂け、

中から夥しい量の黒い腕がわしゃわしゃと忙しく蠢く。

体の各所からは目玉がゾワゾワと浮かび上がり、

鈍色の粘液は体の各所から溢れ出し、

喉の奥からはこの世のものとは思えない音を出し、

不規則に動き続ける体中の関節が内側に折りたたまれる。

少女から醜い肉塊へと、その姿を変えていく。

「ッッッッップイギィアアアアアアアアアアアアアアアアアア！！！！！！！！！！！」

そのおぞましい外見をまともに見てしまった魔王が、叫び声を上げ一目散に逃げ出す。

「ぁぁぁぁぁぁああああっっあああ……！！！！！」

お姉さんが、傘を強く握りしめながら立ち尽くしている。

魂に刻まれた戦士としての誇りが、逃げることを許さないのだろう。

僕は×××××から全力で目を逸らし、叫んだ。

「おねえさん！！！！見ちゃだめだ、逃げて！！！！！」

瞳孔が開いたお姉さんは、震えた手で構える。

ああやっぱり逃げないそうだそういう人だ。

だけどこのままだと全員死んでしまう。

僕もコエダメもお姉さんも。

そうしたら、負けだ。

負けるのは嫌だ。

考えろ、お姉さんを動かす言葉を。

僕は、無い頭をフル回転させる。

「お姉さん！！」

僕は叫ぶ。

「コエダメを助けて戦線を離脱してください！！上官命令です！！！」

瞬間、雷に打たれたようにお姉さんの体が痙攣する。

「承知致しましたわ、お姉様！」

開いた瞳孔のまま素早くコエダメを回収すると、全速力で駆け出した。

軍人と聞いてたけど、すごい効果…。

さて。

僕は─　ここで死ぬだろう。このおぞましい×××××に、嬲り殺されるのだ。

目の端に、おぞましく動く×××××がゆっくりと×××××。

悔いはない。虫けらのような僕の命で、コエダメとお姉さんを救うことが出来た。

ここからでも、勝てるかもしれない。悔いはない。

体を包み込もうとする×××××。精神がハチの巣のようにボロボロと崩れていくのを感じる。

悔いはない。

悔いはない。

悔いはない。

悔いはない。

悔いはない。

くいはない。

「ま＾＾＾と＾＾＾ち＾＾＾＾と＾＾＾ゃん＾＾＾＾＾＾？！」

おぞましい鳴き声が、僕の耳を犯す。くいはない。

「………ッッッ─やっぱり嫌だ！！！！！」

僕は思わず叫ぶ。

「嫌だ！！！死にたくない！！！！来るなっ来るなッ来るなああああッッッ！！！！！」

くいは。僕の喉が勝手に叫ぶ。

「僕はお前みたいな！！！！！ああッッッ！！！！やめろ！！

助けて。タアシイ…僕を助けて…

コエダメ、タアシイ……！！こわいよ…」

📻

ザー。

定期放送です、各選手の殺人スコアをお伝えします。

🦍：0人

💫：27人

🐛：10人

🌂：104人

🥺：1人

以上です。

魔法少女が3rdステージに移行。

目に触れるだけで精神が崩壊します。

遭遇した場合、極力視界に入れずただちにその場を離れて下さい。

繰り返します。

遭遇した場合、極力視界に入れずただちにその場を離れて下さい。

参加者から死亡者が二名発生しました。

死亡したのは、

【伝説の勇者】ゲイズゲラ・ワイルドハート。

【強虫】チーソン。

以上の二名です。

ご冥福をお祈りいたします。

♪～（蛍の光が流れる）

ザザ