🥺 ???

カラスがギャアギャアと不吉な鳴き声を上げ、禍々しい雰囲気漂う魔城。

冷えた石畳の一室に、場にそぐわない華やかな天蓋付きのベッドが置かれている。


その中に、これまた似つかわしくないあどけない少女が、すやすやと安らかな寝息を立てていた。

ただその頭には、大きな二本の歪な角が付いている。


突如、静寂を打ち破り大きな音を立てて扉が開かれる。


犬の顔をした兵士が、慌ただしく大声を上げながら、入ってきた。

凛々しいドーベルマンである。


「オロチマリアちゃん、侵入者だ!!

水玉模様の傘を持った女が大暴れしている!!」


オロチマリアと呼ばれた少女は、飛び起きる。


「うわっ、ビックリした!!」


そして続けて何かを言おうと口を開いた瞬間


「ゴリラだ!!ゴリラのやつが暴れてやがる!!!」


また兵士が駆け込んでくる。

口調も荒々しく歯をむき出しにして怒鳴り込んで来たのは、チワワの顔をした兵士である。


「おい、なにをボサッとしてやがる!ゴリラの野郎がえらく強えんだ!!

お前ら手を貸しやがれ!!」


ギャンギャンと喧しく吼えたてる。


「待て、今先に傘女の話をしていたんだ!」

「傘だあ?こっちはゴリラだぞ、ゴ!リ!ラ!そんな奴あ後回しだ!!」


2匹が言い争っていると、またしても扉が荒々しく開かれ、よろよろと兵士が入室してくる。

厳めしい顔立ちの土佐犬であったが、その表情は恐怖で凍りついている。

彼の常軌を逸した表情に一同は静まりかえり、言葉を待った。


「…お、お、恐ろしい…。…襲ってくる…!!!何かわけのわからない、名状しがたい者が…!!」


やっとといった様子でそれだけ呟き、土佐犬はその場にへたりと座り込んだ。


一同は息を呑む。

未だ誰もこの緊急事態を理解できず、ただ気まずい沈黙が場を占める。


ドーベルマンが思い出しかのように、口を開いた。


「…!そうだ、オロチマリアちゃん!!

指示を!!僕たちはどうすればいい?!」


その一声で我に返ったかのように、残りの2匹も騒ぎ立てた。

わんわんきゃんきゃん、各々、事態を収束させようと躍起になって主張する。


急に責め立てられた少女は、目にいっぱい涙を溜めて、絞り出すように呟いた。


「…なんで、タメ口なんですか…?」


沈黙。誰も答えようとしない。部屋を満たす困惑した空気。

再度少女は口にする。


「なんで…!!ちゃん付けなんですか!?

ウチは、世界を支配する魔族の長、十二魔王が一角。

序列第三位、『泪目なみだめのオロチマリア』ですよ!!!???」


📻

ピピピ、ザーーー。


戦闘の開始をお知らせ致します。

勝利条件は、相手の全滅。敗北条件は味方の全滅です。


参加者は

『伝説の勇者』

『魔法少女』

『強虫』

『駆け落ちの令嬢』


以上四名です。各選手の健闘をお祈りします。


ザーーーーー。

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