7.東京・学生寮 結末

 数日が過ぎた。


 講義が終わって学生寮に戻った私は寮の玄関で立ちすくんだ。救急車が寮の入り口に止まっているのだ。救急隊員が担架で誰かを運んでくる。運ばれているのは・・寮母の西田さんだった。西田さんは血の気の失せた顔で、ぴくりとも動かなかった。


 私の隣にいた寮生二人が話していた。


 「西田さん。数日前から体調が悪いって言ってたわね」


 「そうなのよ。あんなに元気な西田さんだったのに・・分からないものね」


 「でもね。最近、西田さん、なんだか変な宗教みたいなものにハマってたじゃない。あのせいで体調が悪くなったんじゃないの?」


 西田さんが変な宗教? 初耳だった。


 西田さんが救急車で運ばれていくと、私は寮の中に入った。そして、寮母さんの部屋に行ってみた。ドアは空いていた。きっと、救急隊員が開けたままにしておいたのだ。


 悪いとは思ったが、私は西田さんの部屋に足を踏み入れた。


 そして、驚いた。部屋の中がまるで何かの宗教儀式でもやっているかの如く飾り付けられていたのだ。部屋の中央に祭壇があって・・お社のようなものが飾ってあった。


 どこかで見たような・・


 私は思い出した。あれは、貴船神社の奥宮の本殿のミニチュアだ。そして、その横には絵馬が掛けてあった。絵馬にはあの萌黄もえぎ色のポシェットが釘で打ちつけられていた。


 私は言葉を失った。


 西田さんが呪いの犯人だった。私が西田さんに呪い返しをして、西田さんがポシェットに呪いを掛けたので、西田さんと結奈の具合が悪くなったのだ。


 後ろで物音がした。振り返ると、西田さんが立っていた。戻ってきたのだ。私はその場に崩れ落ちた。


 西田さんが私に飛びかかった。


             了




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呪い返し 永嶋良一 @azuki-takuan

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