6.東京・女子大 結奈

 京都から帰ると、私は寮母の西田さんにお礼を持っていった。結奈ゆいなが私にくれたあの萌黄もえぎ色の貴船神社のポシェットを持っていったのだ。結奈の呪いを知らせてくれたんだから、ちゃんとお礼をしなくちゃ。それに結奈のくれたものを私の手元に置いておきたくない。

 

 それから、数日たった。


 女子大で講義が終わったあと、私は結奈と並んで講義室を出た。私は結奈に言った。


 「結奈。なんだか顔色が悪いわよ」


 結奈は本当に具合が悪そうだった。青い顔で私に言った。


 「そうなの。なんだか、このところ調子が悪いのよ」


 私は善意の声を出した。


 「気を付けてね。無理をしない方がいいよ」


 すると、結奈が私の顔を覗き込んだ。


 「ありがとう。茉央まおはどうなの? 体調は悪くないの?」


 私は用意した答えを返した。


 「私も何だか調子が悪いのよ」


 結奈の顔が明るくなったような気がした。


 「そうなの? 茉央も気を付けなよ」


 私は心の中で笑った。嘘よ。私は元気いっぱい。結奈。あなたは、あなたが私に掛けた呪いで死ぬのよ。


 結奈は日に日に衰えていった。


 私はほくそ笑んだ。もう、おしまいよ、結奈。だけどね、あなたが悪いのよ。私に呪いなんか掛けるからよ。こうなったのも、すべてあなたの自業自得なのよ。私は勝利に酔った。これで、山岡君は私のもの。

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