第11話
11.
2555年4月3日(木) AM6:00 東北星系 惑星青森直上 強襲揚陸艦 シロイベース ブリッジ
「全艦ワープアウト終了、現在の艦隊と日本標準時の時差は+2時間、現在惑星青森直上。敵依然として惑星青森軌道上に存在、彼我との距離は約1万キロ。」
ミクが現在位置を報告する。
艦隊は敵性艦隊から見て惑星の反対側にワープアウトした。
「敵が気が付いた様子は?」
「今気が付いたようね、敵、青森の軌道からスイングバイ加速を使って離脱を開始、このコースだと我々が衛星軌道を脱するまでに一度攻撃を受ける計算になるわ。」
「少なくとも俺達が使った施設が何であるか、それは理解しているようだな。敵がそれを理解した上で破壊せずに残したのかが気になるが…」
「今は情報が少なすぎて何もわからないわね…」
「ああ、今回の戦闘は敵艦を最低でも1隻鹵獲しないと、敵にこちらの情報を与えただけになる。ミク、盾になりそうな船を2隻抽出しろ、こちらもスイングバイ加速で一気に敵へ肉薄する。またこれから敵艦をボギー1から3と呼称することとする。」
艦隊もスイングバイ加速を使い、敵性艦隊と同じ軌道をたどる。
スイングバイをほとんど利用せずに衛星軌道を離脱した敵艦隊は十分に加速をしたこちらに追いつかれるのは理解しているはず、となればこちらがスイングバイを離脱して、同一線上になる時が敵側の最大の攻撃のチャンスである、マサトはそう読んでいた。
『参謀本部、聞こえているか?』
『こちら参謀本部、主席分析官 ユミコだよ~』
マサトは少しだけ眉間に皺を寄せた。ユミコが優秀な分析官であることは知っているが、どうにも実年齢から乖離した喋り方が気に障るのだ。
しかし公私混同はしない、マサトは大きく息を吸って気持ちを静めてから、報告を続ける。
『これよりスイングバイ加速を終え、敵艦隊の軌道に合流する。恐らく敵艦隊はこの瞬間を使って全力攻撃をしてくるだろう、これからの戦闘、余すとこなく全て記録してくれ。』
『了解~ばっちり余すことなく記録するからそっちは戦闘に集中してね。』
『了解、通信終わり』
「ミク、盾に使うレッドハヤブサヤマト、ガッツエンペラー1の核融合炉、シールドジェネレーター、オーバーロード、敵の軌道に合流してから30秒だけ持たせれば十分だ」
「了解、軌道に合流するタイミングでシールドが最大出力を発揮するよう調整するわ。軌道合流まであと10秒…5秒…軌道に合流!」
敵性艦隊3隻は左舷をこちらに向けている、カバーだと思われるものが解放され、無数のレーザーがこちら側を狙ってきている。そして艦隊が軌道に合流したと同時に一斉射が放たれた。
「敵攻撃、レッドハヤブサヤマトおよびガッツエンペラー1に命中、現在はシールドで敵の攻撃を防いでいるわ。」
「敵の配置はどうなっている?」
「ボギー3がボギー1とボギー2の奥にいる。」
「ガッツエンペラー2およびガッツエンペラー3をそのままボギー1とボギー2に突っ込ませろ。ボギー3を鹵獲対象に設定。イエオンとガソバスターはボギー3の推進器を破壊、シロイベースとガレキングに搭載してある陸戦隊でボギー3を制圧、無力化する。」
ガッツエンペラー2、ガッツエンペラー3は軌道合流後も更に加速を続け、ボギー1とボギー2に命中、ただの体当たりとはいえ十分に加速の乗った大質量の物体である。エネルギー装甲も物理装甲も軽々と打ち砕き、船体はひしゃげてバラバラとなった。
イエオンとガソバスターはボギー3と相対速度を合わせて推進器を集中攻撃、ガレキング、シロイベースは敵の上面に接舷、敵艦内への侵入を開始した。
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