第10話

10.

2555年4月2日(水) PM6:30 関東星系 惑星日本 軌道エレベーター上 会見会場


タケルは今回の救援及び攻撃艦隊のお披露目と、それに関する記者会見に出席するため、軌道上の浮きドッグが一望できる軌道エレベーターの展望室内に作られた、会見会場に出席していた。

軌道上の浮きドッグには我が日本国が誇る最新鋭の戦艦や空母も係留してある。

しかし今回の作戦に参加するのはそれらではなく、浮きドッグの端に係留されている、企業達が作り上げた大きなおもちゃだ。

よくよく観察すると今もあわただしく搬入作業が続けられている。しかしそれに気づけるのは、今回の作戦内容を既に知っているものだけだ。

事実展望席に設置してあるモニターではアナウンサーが浮きドックに停泊している第6宇宙艦隊を背に、惑星青森の人々を救う艦隊がもうすぐ出発する旨を伝えている。

本来なら艦隊提督としてマサトもこの記者会見に参加する予定であったが、自分は任務を遂行するのに集中したいとの理由で、参加を断られた。

ようするに、面倒ごとを全てタケルに押し付けたという事である。

記者会見の時間になったので、タケルは会見会場の演壇に立つ。

世論は一方的に隷属するように命じてきた襲撃者に対し、夷狄討つべしといった感情を燃え上がらせている。

しかし、あのサイボーグ歩兵達の見た目のバリエーションの多さから、敵勢力が我々をも凌ぐ大勢力である可能性は高い。

そんな敵を相手にこの戦争は勝てるのか?いや、日本を今のまま存続できることができるのか?そんな不安がタケルを襲い、胃がまた痛くなる。

とにかく今は先の心配より目先の問題を解決する事が先だ。そう考え直し、タケルはスピーチを始めた。

「ご会場の皆様、そして配信などを通してこの会見を見ていらっしゃる皆様、私は日本国 防衛省 参謀本部所属 参謀長、タケルであります。皆様ご存じの通り、先日未明から本日朝方にかけて異星人と思われる敵性勢力が東北星域 惑星青森を攻撃したという事件は皆さまもすでにご存じであるかと思います。その中で我々は対異星人プロトコル 乙八を発動、現在惑星青森に取り残されている民間人を救助するため、救援及び攻撃艦隊を発進させることとなりました。我々はなにがあろうとも日本人類の血を流させはしない、その相手が遥かに我々を凌ぐ大勢力であったとしてもです。この一手が異星人による理不尽な侵略に抵抗する、最初の一矢となる事でしょう。

それではこれから旅立つ最初の一矢へ、皆さま盛大な拍手をもって送りだしてあげてください。」

会場は大いに盛り上がり観客たち、皆が席を立ち盛大な拍手をしながら、タケルの後ろを通るであろう勇壮な艦隊が来るのを今か今かと待ちわびていた。

そしてそんな彼らの目に映ったのはシロイベースにガレキング、ガソバスターにイエオン…

他の艦艇も古のアニメや漫画で見たような見た目だ。

辛うじて拍手は収まってないが観客の顔はみんな唖然としている。

そして艦隊が次元跳躍ゲートに侵入、一路惑星青森への旅だった瞬間、各メディアは先ほどの物はなんだったのかと、タケルに質問を浴びせかける。

「参謀長!あれはいったい何なのですか?そもそも軍はまじめに民間人を救出する気があるのですか?」

「艦隊編成については我々参謀本部が今作戦において最適とした戦力を抽出いたしました。編成意図などについては現在は機密情報としてお伝えすることはできません。しかしながら今回の騒動が終わり、機密指定が解除され次第発表いたします。民間人の救出に関しては今回の戦力で間違いなくできると確信しております。これは中央コンピューターに再計算もさせた上での結果です。」

中央コンピューターで再計算、承認されたというのなら、あのトンチキな艦隊が惑星青森の民間人を救い出すのに十分な戦力なのだろう。

しかしその意図については到底わかりかねない。

記者たちはどうにかして編成の意図を聞き出そうと、必死になったが最後までタケルは機密指定を盾に何もしゃべる事は無かった。

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