第7話

7.

2555年4月2日(水) AM10:30 関東星系 惑星日本 日本軍参謀本部 参謀長執務室


タケルは改めて自身の机の前に設置した来客用の3人掛けのソファの中央に座り直し、タブレット端末に表示させた、救援艦隊と攻撃艦隊の編成表に目を通す。

エミはタケルに密着するようにその隣に座り、自身の仕事であるタケルのパフォーマンスアップに精を出す。

ユミコは机を挟んで2対ある一人掛けのソファにちょこんと座り、タケルの評価を待つ。

ドロイド達は新しく赴任したお茶くみ係の優れたポテンシャルを発揮できるように、タケルの執務机の椅子を二人掛けに交換したり、エミがお茶を入れるのに使う什器等を搬入している。

「ユミコ主席分析官…この編成は本気で言ってるのかな?」

「マジマジのおおマジ、真剣と書いておおマジだよ~」

タケルは改めて編成表を見直した後、固く目をつむり大きくため息をつく。

ユミコが提出した編成表には我が日本国が誇る最新鋭戦艦や空母はおろか、退役間近の老朽艦の名前すらない。全て民間から徴用した船だ。

それどころか大きさはともかくとして船の形をしていないものすらある。

しかし彼女はあの管理者が直々に請う形で、若干20歳の若さで主席分析官に就任した天才だ。それから五年、彼女が今までに積み上げてきた実績も確かなものだ。

タケルは自身には思いつかない何かがあると考え直し再度ユミコに問う。

「じゃあどうして、今まで企業の連中が趣味で作ったシロイベースやガレキング、ましてや船の形すらしていないガソバスターやらイエオンをわざわざ徴用して使うの?」

「それはね、今回の敵勢力も今回の襲撃を行う前から日本…正確に言えば惑星青森を観察していたと考えられるからだよ。その観察した上での今の日本の評価は、電波なんてあまりにも時代遅れな通信規格を使っている上に、あまりにも合理性に欠ける無駄な兵器を使って意味不能な闘争をしている理解不能な勢力だと認識していると思われるからだよ。」

「すまない、もうちょっとわかりやすく教えてくれないか?」

「だからね、わざわざこちらの本当の切り札や最新兵器を見せる必要なんてないって事、今朝の戦闘と同じように効率の悪いわけのわからない兵器を使うのに、その数だけは多い変な集団だって勘違いさせた方がいいと思うの。相手を勘違いさせつつ、確実に撃退できる戦力かどうか、ちゃんと管理者にも再計算させた結果だから大丈夫だよ。」

どうやら主席分析官の名は伊達じゃないらしい、タケルは改めてユミコのその才能を再認識する。

「ちなみに、敵勢力はいつ頃から惑星青森を観察していたと思う?」

「多分2週間、多く見積もっても3週間ぐらいだと思う。」

「その根拠は?」

「4週間前だとあの特攻ミサイル神風君騒動があったからだよ。あれを敵勢力が見ていたら絶対に警戒してもっと細かく観察するよ。」

「それと敵の情報を得るためにもできるだけ敵艦の内部は破壊せずに鹵獲したいの、そのための突入部隊の編成とそのための新装備も提案したから確認してほしいの。」

タケルはそう言われて、ようやく送られてきたファイルが艦隊の編成表の他に、もう一つある事に気がつき、改めてそのファイルに目を通す。

「この突入部隊の編成案は今朝あった襲撃のデータを元に急いで作ったから、私も寝不足気味なんだよ?」

「え~と…だから?」

「だからね、ご褒美が欲しいって事。」

「ご褒美って何がほしいのかな?」

「おっぱい!!」

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