第3話
3.
2555年4月1日(火) PM19:00 東北星系 惑星青森 拠点 十和田 ラウンジ内
先ほどまで少々窮屈に思えたラウンジだったが、今は広々としている。
結局その場で軍務に就く旨を承諾したのは全体の三分の一程度だった。
非常勤でやっている人達で承諾するのは僅かだろうし、元から非戦闘員のスタッフだっている。
命の危険がないとはいえ、今すぐ決める事ができないのは当然だ。
爆撃は一時間ほど前から止まっている。敵の方も次の手を打つための準備をしているのだろう。
今はその場で軍務に就くことを承諾した人達には、新しいマリオネットを支給するのではなく、今使っているマリオネットを改造することで対応するとしたため、その改造手術待ちだ。
改造が終わってラウンジに戻ってきた人たちは皆一様に微妙な顔をしている。
何があったのか聞いてみたが、誰に聞いても改造手術を受けたらわかるよと返されるだけだった。
自分の順番が来たことを告げるフィードが表示されたため、処置室に入る。
処置室には手術用のポッドが置かれている。
処置を受けるため、服を脱ごうとしたが、服は脱がなくていいと止められた。
そのことを不審に思いながらもポッドに横になり、指示に従いマリオネットからログアウトする。
処置自体は10分もあれば終了するとのことなので、元の体で覚醒するのはやめて、VR空間へ接続する。
お茶を飲みながら、ワールドニュースチャンネルを確認する。
どのチャンネルも未確認勢力による攻撃の事について持ちきりだ。
そうしているとフィードに処置が完了したとの表示がされたので、VR空間からログアウトし、再度マリオネットに接続する。
医療ポッドから身を起こし体を弄ってみるが特に何かされたような形跡はない。
少々不審に思いつつも管理者へコールを行う。
『管理者、特に体の方は弄られた形跡はないようなんだが、いったい何の処置を行ったんだ?』
管理者からの返答はすぐにきた。
『頭の中に爆弾を仕掛けさせていただきました。量子通信技術が敵の手に渡る事を防ぐための処置です。』
なんということだ。頭の中に爆弾を仕掛けられてしまった。
『それってお許しくださいとか言われて、敵めがけて落とされるとかそんなことされないですよね?』
『何をおっしゃっているのかはわかりませんがそんなことはしませんよ。それで相手に手痛い打撃を与えられるのであれば実施するかもしませんが』
所詮仮初の肉体とはいえ、人間爆弾として敵地で爆死するのは気分がいいものではない。
処置を終えたみんなが微妙な顔をしていたのはこのためであろう。
俺も同様に微妙な顔をしてラウンジに戻る。
ヨウヘイが処置を終えた俺の微妙な顔を見て何があったのか聞いてきた。
「改造手術をうけたらわかるよ」
俺はそう答えた。
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