第2話

2.

2555年4月1日(火) PM17:00 東北星系 惑星青森 拠点 十和田 ラウンジ内


拠点十和田のラウンジ、かなり広々としたスペースのはずだが、2勢力の人員を収容するには少々手狭なようだ。

特に険悪な雰囲気等はない。当たり前だ、俺達がやってきた戦争は娯楽の延長に過ぎない。

今も時折爆発による振動が伝わってくるが、頻度は散発的になってきた。

マテリアル転換炉と核融合炉、この二つの技術を持っているのなら、今も同じペースで爆撃が続けられているはずだ。

つまり敵は攻撃を続けるには後方からの補給が必須なのに対し、我々はマテリアルプリンターを使用する事で、弾薬などの物資を現地調達できる。

つまり我々日本人類は敵に対して補給の面で大きなアドバンテージを持っている事になる。

壁面にかけられたモニターが切り替わり、ひっつめ髪に眼鏡、リクルートスーツと呼ばれる前時代の衣服を着た若い女が映し出される。

誰もがその存在を知っている。我々が管理者と呼んでいる中央のマスターコンピューターのアバターだ。

「皆様、お疲れ様です。先ほどの爆撃では施設に幾何かの被害が出ておりますが、幸いにも人的被害は0にとどまっています。」

この惑星青森は日本人類の勢力圏の端に存在する僻地中の僻地だ。それでもこんな所に住む変わり者は少なからずいる。

そんな中で死者が出なかったのは幸いだ。あたりまえではあるが、マリオネットの死亡は死者の数には入らない。

「現在、軌道上の敵性勢力の船より電波通信にて降伏勧告がなされています。」

サウンドオンリーの表示と共に敵性勢力から送られてきた音声が流れる。

『降伏せヨ、抵抗は無意味、我々と共にあることのみガ、お前ラが生存すル価値である。』

「敵性勢力は我々が戦争で使用していた電波通信を傍受、解析することで日本語を学んだようです。敵性勢力は我々も使用している超光速航法を応用した通信規格を使用していると思われます、我々が使用している通信フォーマットではないため、今はまだ傍受等はできませんが、数日中に解析は完了するでしょう。また、こちらで主流となっている量子通信が行われた形跡はありません。」

これも大きなアドバンテージだ、我々日本人類が何百年にもわたる繁栄を手にすることができたのは、この量子通信の力だと言っても過言ではない。

「現在行われているすべての戦争はすべて中断、この有事に対して志願するスタッフを募る事にいたしました。条件、待遇等は各々のインプラントへ送信してあります。皆様がこの困難に立ち向かっていただけることを我々は期待しています。」

インプラントに送られてきた募集要項に目を通す。


1.シフトは2週間毎の2交代制とする。(ただし休暇中でも緊急招集が行われた場合、直ちに休暇を終了し、軍務に復帰する事)

2.シフト中の労働時間は1日4時間とする。(ただし戦闘中、作戦行動等に従事中は無制限となる。)

3.軍務従事者は管理者が指定した仕様のマリオネットを使用する。本体での軍務の従事は厳禁とする。

4.軍務従事者は日本人類およびA級アンドロイドに限られる。


1月の半分もこの僻地に捕らわれるのは少々厳しいが、それ以外は妥当だと思う。

それ以上に異星人との戦争なんて経験、これを逃したら二度とないと思っていいだろう。

「なあ、みんなはどうする?俺はこのまま軍務従事者として登録しようと思うんだけど。」

「こんな面白そうなこと、やらない理由なんてないだろ?」

ヨウヘイは乗り気のようだ。

「セイ様が従事するのであれば私も従事いたします。」

「ヨウヘイが行くのに私だけお留守番なんてやだよ。」

コウメやサキもやる気だ。

そうとなれば迷う理由は一つもない、俺は応募シートに軍務に就く旨を記入し送信した。

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