第11話 絶望と渇望
「落ち着け!!!!」
混乱の市井に力強い声が響き渡った。
「一つ一つ確実に、冷静に潰していけ!!!」
声の主はそう続け、周囲のスライムに襲いかかる。その姿は英雄らしいものであったが……。
「勇者だ……」
「勇者はいるが……明らかに疲れてね?」
「なんか、キレがないというか……」
住民からの反応はいまいちだ。
彼らは知っているのだ。勇者が王国の手先であり、王国をはじめとした周辺国は魔法を利用することしか考えず、魔の真髄を理解しようともしない愚か者だということを。
そして何より、今までの勇者の振る舞いからして、彼は所謂『英雄』と呼ばれるような人物たらない人間だということ。
「クソっ……ここまでか……!」
「勇者様、頑張ってください!!」
「お兄ちゃん、まだいけるよ!!」
「すぐに回復します!!!」
……あとは、彼が3人の美少女を独占しているのも、気に食わないポイントだ。
「ぐぁぁ……」
「これ、ヤバくね……?」
勇者の悲鳴と同時に、街の誰かがつぶやいたその一言が、現状を表していた。
目下に広がるスライムの大群。
街の川はすでに毒に汚染され、気が付かずに飲んで闇に飲まれた人も多数。
逃げようにも混乱で進めず、戦おうにも数の暴力に屈してしまう。
まさに、絶望。
「ど、どうする……」
「お、俺は逃げる!!!」
「川が……俺たちの川が……」
「くそッ……!!」
追い詰められた彼らは、無意識に求めた。
倒れて美少女たちに介抱されている勇者でもなく、状況を見て焦りつつもどこかニヤニヤしているワルボン公爵でもない、自分たちを助けてくれる――
―――――『英雄』を
「お〜、やってんね〜」
さなか、頭上からそんな呑気な声が響いた。
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