第10話 スライムの脅威

「きゃー!!」

「す、スライムだぁ!!」

「逃げろ、子供が先だ!!!」


街に突如として現れたスライムの大群。

それを見て、住民たちは阿鼻叫喚の声を上げ、走り出す。


それは、周りの人々を巻き込んで派生し、どんどんと大きくなっていき、ついには混乱へと姿を変える。


世界最強とも呼ばれる魔法都市。


住む人の殆どが魔法を使えるこの街では、滅多なことでは悲鳴などあがらないし、ましてや魔物相手に逃げ出すなんてありえないのだが。


スライムは別なのだ。


この生物、雑魚キャラ、経験値などボロくそ言われている世界もあるようだが、この世界だと侮れない。


というか、最強と言っていいほどの強さを持っている。


体の中にある核を壊されなければ半永久的に体を蘇らせることができ、体内で動き回る核を仕留めるのはかなりの難易度。


そして、分身を作るスピードも桁違いに速い。


『スライム見かけたら即座に殺すか諦めろ』とは、どこの国のことわざか。


とにかく、スライムは人類の天敵なのだ。


ではなぜスライムは世界を席巻していないのか。

そこまでの力と繁殖力があれば、世界征服くらい容易に思えるだろう。


しかし、彼らは元々、非常に極めて温厚な性格だ。


ぷにぷにとしたその見た目通り、並大抵のことでは怒らず、攻撃もしてこない。

それどころか、田舎の方では人々を手助けしてくれるような、優しいスライムもいるくらいだ。


スライムは安全であり、心の友なのだよ。

怒らせなければ。



そう、怒らせなければ。



もしも、もしも仮に、並大抵のことではピクリともしない彼らを怒らせてしまえば、それはもう言うまでもないだろう。


国王がスライムを怒らせた3日後にはその場には野原しか残っていなかったというのは、どこの国のお話か。



つまるところ、なのだ。



「み、みろ、水が濁って……!」

「うちの子が、川の水を飲んだきり倒れてるの!!」

「誰だよ……誰だよ怒らせたやつ!!」

「ヤバいって、マジで終わるって……!!」


迫りくるスライム……しかも、ポイズンスライム達に人々は我先にと逃げ惑う。


「くそっ、こうなったら!!! ファイヤウォール!!」


皆できる限り攻撃を控え、スライムの怒りを鎮めようとしていたが、彼らの怒りはもはやそのレベルではなかった。


それを悟った一人男が、魔法を放つ。


「や、やった……やったぞ……!!」


人々とスライムの間に炎の壁ができ、スライムがそこをまたぐのを躊躇したのも、ほんの一瞬のこと。


「あ、あぁ……ば、化け物だ……!!」


スライムたちは何事もなかったかのように、炎の壁をまたいで人々を追いかけ続ける。


そうそう、一つ言ってないことがあった。


スライムの体は、基本的に魔法を受け付けない。

通じるのは氷の矢とか、鋭い風の刃とかのみだ。それも、核に当たらなければ意味をなさない。


彼らを倒すには、物理的に核を一つ一つ、地道に潰していくしかないのだ。


基本的には、ね。

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