第8話 勇者たちと公爵

「この先にあるというのは本当なのか?」


勇者が尋ねた。


「間違いありません」


その後ろで、大量の脂汗をかく男がニヘラと笑って答える。


「この先に、川の汚染の正体が……」


勇者の隣で、魔法使いの女が疑うような表情を浮かべる。


「とにかく、行きましょう!!」


勇者の妹のそんな掛け声により、勇者パーティーとワルボン公爵は山の奥へと、川の上流へと向かい始めた。



 ◇ ◇ ◇




「っ!! あれは……!!」


山を登り始めて30分弱が経過した頃。

彼らの顔には疲れが見られ、この先に何があるのかという疑惑も強まっていた。


「ポイズンスライム……!!」


聖女たる少女が、驚きながら叫ぶ。

彼女の視線の先には、ぷよぷよとした紫の塊が100……1000以上見えていた。


「しかも、キングサイズまでいるぞ!!」


「どうしますか!?」


魔法使いは勇者に尋ねる。


スライムというのは、基本的に無害な存在だ。

しかし、このポイズンスライムだけは別。


直接的な攻撃をしてこないが、存在するだけで周囲が汚染され、汚れていく。なので、見つけた場合、即駆除が推奨されている。


しかし、目の前には見渡す限りのスライム、これは流石に勇者としても……。


「応援を……いや、ここで倒す!! いけるか!?」


考えを巡らせた彼は、そう叫んだ。


撤退の二文字がよぎったが、先日の浮島での出来事。そこで何もできなかった自分と、心の底から見下した相手の態度。それは彼のプライドを深くえぐったのだ。


俺は、勇者だ……!!!!


そんな熱い思いは、空回りしながら伝染していく。


「はい!!」

「もちろん!!」

「当たり前よ!!」


「ワルボンさんは下がっていてください」


顔を見合わせて、頷きあった彼らは見るからに非戦闘員のワルボンを下がらせ、本格的に戦いを始めた。







 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


文字数は少なくなりますが、ペースは上げていきます!!

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