第14話 エニグマ
『エニグマ』
すると突然、俺の背後に気配が。
俺は咄嗟に振り向いた。
するとそこには、俺と同い年か、もう少し若いくらいの少女が立っていた。
「お呼びですか。ニムバス様」
エニグマと呼ばれた少女が恭しくお辞儀をしながら言った。
『うむ。こいつの特訓の準備をしてくれ』
「かしこまりました」
エニグマは再びニムバスに対して深々とお辞儀をすると、やおら俺に向き合った。
「それではどうぞこちらへお越しください」
エニグマはそう言うと踵を返し、明かりの射す入り口に向かって歩き始めた。
「あ、ああ……」
俺は気圧されながらも、エニグマの後を追った。
するとその背に、ニムバスが声を掛けてきた。
『せいぜい俺のために頑張ってくれ』
俺は振り返りもせずにニムバスに答えた。
「お前のためになんて誰が頑張るかよ。頑張るとしたら俺自身のためだ」
『どっちでもいい。結果はおなじなのだからな』
ニムバスはそう言うと、高らかに笑うのであった。
「やっぱり眩しいな」
俺は再び半透明に光り輝く世界に戻ってきた。
周囲はダイヤモンドかと思わせる程の光沢を放つ物質に囲まれている。
だが俺の言葉にエニグマは一切反応しない。
結果として俺の言葉は独り言となった。
俺は少し気まずい思いを胸に、さらにエニグマの後を付いていった。
するとエニグマは神殿を抜け、大階段をも下っていった。
そして神殿の前の土気だった広大なスペースの真ん中辺りまで来て、ようやく止まった。
エニグマはゆっくりと振り向き、言った。
「準備はよろしいでしょうか?」
俺は戸惑った。
準備と言われても、困る。
どうすればいいのか逡巡していると、エニグマがすかさず言った。
「心構えだけで結構です。特に武器などは必要ございません」
「そうなのか……なら、まあ」
「では参ります」
エニグマは時間が惜しいとばかりに早速始めようとした。
俺はさすがに押しとどめた。
「ちょっ!ちょっと待ってくれ!……もう少し時間と……後、もう少し聞きたいことがある」
「何でしょう」
エニグマは常に感情を一切表に表わさず、冷静そのものといった様子である。
俺は少し心を落ち着かせて、問い掛けた。
「その、特訓というのは魔物とってことだよね?」
「左様です」
「じゃあその魔物を……君が召喚するって感じかな?」
「その通りです」
「その魔物なんだけど……俺でも倒せるレベルなのかな?」
「もちろんです。貴方が必死に戦い、ようやくギリギリで勝てるレベルの魔物を召喚いたします」
「げっ!……マジで?」
「無論です。そうでなければレベルが上がりません」
「それはそうだろうけど……」
「もうよろしいでしょうか」
「い、いや、もうちょっと待って」
俺は右手を上げて、エニグマを止めた。
「その……ちなみに最初はレベルいくつの魔物を召喚するつもりなの?」
エニグマはスーッと目を細めて、ジッと俺を見つめながら答えた。
「初めはレベル50でよろしいかと」
俺は目が飛び出そうになるくらいに驚いた。
「ちょっと待って!無理!無理無理無理無理!レベル50なんて瞬殺されるよ!無理に決まってんじゃん!」
「そんなことはないかと」
「いや!あるって!瞬殺だって!」
「無論、今の貴方よりかは格上ですが、決して勝てない相手ではないかと」
「何言ってんの!勝てるわけないじゃん!俺のレベルいくつだと思ってんのさ!レベル8だよ?」
だがエニグマは顔色一つ変えずに言った。
「それはニムバス様が中に入られる前のレベルだと思いますが」
「え?……もしかして一万分の一が入ってレベル上がったとか?」
「ご自分で確認されたらよいのでは?」
俺は慌てて『ステータス』を唱えた。
すると、そこには驚くべき数字と忌まわしい言葉が羅列されていたのだった。
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ジーク=テスター
レベル:45
HP:257
ちから:302
すばやさ:331
まもり:258
かしこさ:192
MP:161
クラス:
特殊能力:毒無効 暗闇無効 麻痺無効 沈黙無効
物理威力MAX 魔法威力MAX
物理耐性MAX 魔法耐性MAX
炎魔法MAX 氷魔法MAX 雷魔法MAX 地魔法MAX 風魔法MAX
闇魔法MAX 召喚魔法MAX
HP自己回復MAX MP自己回復MAX
称号:悪魔王の分身
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