頁51:赦される為の戦い/知覚の外
これは、創造者も編纂者も知る事が出来なかった一瞬の出来事の記録。
赦す者と試される者のみがそれを知っていた。
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『 』が変わった。『 』がしない。『 』も止んだ。世界から音が消えた。
それでも『 』『 』からは視線を動かさない。感覚で確認すればいいだけだ。
『ンホホホホホ…。明確な異変が起きたというのに集中を切らさないとは…末恐ろしくもあるのぅ』
『 』語を操る、『 』の姿を
必要な情報だけ拾え。それ以外は切り捨てろ。それが生きる為の最善手だ。
『聞いているか理解出来るかは知らんが、
何を言っているのか理解出来ない部分はもう忘れたけれど、確かにミサキとシシバの気配が感じられなくなった。少なくとも自分が移動するかもしれない戦闘範囲内にはいない。ちょっと安心した。
『さて、『 』を
触れる…だけ? それだけでいいのか?
『簡単じゃろう? 【綴り人】どもの国の言葉で言う【
『 』…って何だろう。
『ああ、必要だと思えば
弓を握る左手に自然と力が入った。挑発だ。分かってはいる。
「その言葉、後悔しないでね」
開幕の宣言を聞く必要は無い。即、一の矢を軽く放つ。同時に側面に回り込み全力の二の矢を放つ。力加減を変えて撃つ事で回避のタイミングを狂わせる狙いだ。勿論そのまま当たってくれればいいんだけど。回避されても誘導した先に留めの矢を撃ち込めば終わる。それだけの事だ。
しかし『 』『 』は
「な…!?」
パリッという乾いた音が響いたと思ったら、放った二本の矢は『 』『 』に届く事無くその手前に浮かんでいた。薄『 』みたいな物を貫いた状態で。
『恐ろしく正確な射撃じゃな。どれだけの
「当たらなきゃ努力の量なんて意味無いだろ」
あの『壁』が攻撃を全て防御するという訳だ。けれど
『ヌシの体の一部であればこの壁は弾かんぞ? それでもまだ得物に頼るのかの? ンホホ…』
小『 』『 』にした表情で『 』『 』がせせら笑う。大丈夫、今度は乗せられたりしない。
この戦いは長くは続かない。いや、続けても終わらない。だから全てをぶつける。
大きく、深く『 』を吸い込む。僕の体の隅々まで巡らせ同時に叩き起こす様に。
体の中心で心臓がドクドクと激しく収縮を始める。血液が勢い良く全身を駆け巡り、燃えてるんじゃないかと錯覚する。
『…ほぉ。いやはや驚いた。これはあ奴等の想像を遥かに超えとるの』
何か言っているみたいだけど
片を付けられなければ待つのは───
「行くよ」
体の内側に張り詰められた何かがプツっと切れた。それはこの一瞬の始まりを告げる音。
何千回と繰り返した動作で矢を
ゆっくりと飛んで行く矢をそれ以上構わず次の行動に移る。見なくても絶対に当たるのは分かっている。
『 』『 』の周囲を駆け回りながら次々と矢を放つ。放たれた矢がゆっくりと全方向から『 』『 』に向かって迫って行く。残る矢は……一本。頭に痛みが走り始めた。限界が近い。でもまだだ。
手近な杉の木に一気に登り、標的の頭上辺りに伸びる枝に乗り移ると最後の矢を
(絶対に、勝つ。
激突の直前に世界の速度が解かれ、ゆっくり移動していた矢達が一気に加速し『 』『 』に全方位から襲い掛かった。
しかしその全てがまたしても手前で動きを止める。
「…この野郎ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
グン!と速度を上げて『 』『 』の真上に落下していく自分の体ごとぶつけるつもりで、両手で固く握りしめた
けれどまた───乾いた音が邪魔をした。
『おお…まさか上からとはのぅ…。
「……!!」
『ンホホホホ。逃げる迄も無かったのぉ』
言い返したかったけれど、連撃の反動で体が言う事を聞いてくれなかった。
視界の端でゆっくりと振り返る『 』『 』の頭上。
貫き切れなかった最後の一矢が宙に張り付けられ震えていた。
(次頁:52へ続く)
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(話注)
『 』はまだ【辞典】に登録されていない事/物/現象です。
どの『 』に何の名称が入るのか、お分かりになりましたでしょうか?(いくつかは簡単に分かると思います。)
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