頁52:試練の結果とは
本当は叫ぶのすら限界だったらしく、抗議した彼は再びへたり込む。その様子をさも楽しそうにンホンホ微笑みながら祭壇の化身は言った。
『生身で触ろうが
お爺さんが憎々し気に目の前に手を伸ばすと、パリッという静電気みたいな音と共に薄紙を広げた様な幕が展開された。
「うぉすげぇ…めちゃカッコイイ…!」
『はぁ、全く……おんしは人の気も知らんで…』
これがお爺さんの言う『壁』…? バリアという事だろうか。
『ヌシの異常な身体能力であれば
「く…!」
わざとだとは思うが、冷めた眼差しで
「何もそこまで言わなくても…。まだ子供ですよ?」
『星の
「え…」
無音。星に限りなく近い存在でも名無しの制約には抗えないのか。けれど容易に想像はついた。
恐らくは『
この星の人間の
『ふぅ……
『壁』を設けて下さった神様、本当に感謝します。セクハラエロジジイめ。
「そんで? エロじーさん、ユッシーは結局失格なのかよ?」
しれっと呼び名が変わっていた。
『本来であればぶっちゃけ戦闘能力なんてどうでもいいんじゃよ。そんな物は経験を重ねれば勝手に出来上がって行く。言ったじゃろう?
「けどココロって言ってもサー…」
明確ではない審査基準に
仮に引退するとかならばまだいい。良くは無いけれど。でももし万が一復讐心が満たされきらず有り余った力が『また違う何か』に向けられた時───その対象が
『お嬢ちゃんは分かっておる様じゃな』
「え、ズルいみさのしん!」
なんだズルいって。
私の表情から見透かされたのか、それとも心を読む術を持っているのか。お爺さんが目を細めてこちらを見ていたが…それはニヤついた笑顔では無かった。
『しかしながら、いみじくもおんしらは言った。
「……」
褒められているのだけれど
『そこでじゃ。ヌシは特別の特別に、
審判者が高らかに宣言した。けれど…
「仮…」
「ゴウ…」
「格…??」
いや、仲が良くてもいいんですけどね…。
『左様。未熟な心と突き抜けた実力が混在するヌシだからこそ慎重に見極めなればならぬ。
何だかおかしな事になってきた。初めて立ち会う儀式でまさか仮処分が下されるとは。
「
一応こういう知識を持っていそうな彼に聞いてみる。
「なんでオレちゃんに聞くのヨ!? いや、でも、うーーーーん………あんまり見た事無い展開かなァ」
やっぱりそうなのか。
「仮合格って事はまだ僕に何かさせようって事だろ。それで? 何をすればいいんだ」
早くも回復したらしい
『せっかちな小童じゃのう。いいか、良く聞け。本当の意味で
「…? どういう事? 意味が分からないんだけど」
復讐してもいいけど復讐に呑まれるな…。分かりそうだけどあと一歩分からない。心の持ち様が関係しているのは確かだろうけれど。
『ンホホホホ…頭が悪いのう…。ま、せいぜい
「なんだよエロじーさん、意地悪だナ。でもまあ良かったジャンかユッシー、仮だろうが合格は合格なんだし。仇の
この仮合格の真意を全く考えていない無責任カミサマが軽く励ます。はぁ…。
「うん。その……ありがとう、シシバ。それとミサキ」
「えっ」「えっ」
頬っぺたをポリポリ掻きながら我々から目線を外して
『何を他人事みたいに言うておるんじゃおんしらは』
「はい?」
クールな子の見せるギャップの良さが分からなさそうなお爺さんが
呆れられる理由が分かりませんが。
『
「は?」
「え…それは一体どういう…」
おかしな展開がまさかの飛び火してきた。見届けるって? 我々が?
『
なんだプリチーな祭壇って。怪しい通販商品か。
『よって、儂の代わりとして星の使命を背負いしおんしらが
「ちょ…!? いきなりそんな事言われましても…!」
一人っ子だった上異性と付き合った経験も無いというのに突然こんな大きな子の後見人だなんてあらやだどうしましょう。
いえ、ウキウキなんてしてませんよ? ukuk。
「そうだよエロじい、ユッシーが合格かどうかなんてオレらにゃ分かんねーし」
呼び名がまた変化した。より失礼に。
『案ずるな。あくまでも見届けるだけじゃ。最後の審判はこの星が下す。おんしらはおんしらの思う様に小童と行くがよい。復讐に手を貸そうが止めようが
うーーーん…。思わず
私達自身、自分らの使命がまだまだ不明瞭であるというのにここにきて更に新たな役目を負わされたのだし。
ただ、やはりこういう時に閉塞空間をこじ開けるのは彼だった。
「ま、それならムズかしく考えてもしゃーないか! こうしてみんな無事だったワケだし。分かんないなら後はやるべき事をやるだけっショ♪」
「まあ、そうだね」
ニャハハと軽薄に笑い飛ばすカミサマ。そして無表情の
『ありゃ何も考えておらんの…。おんしも苦労するの』
「…全く仰る通りで」
『だが、
小さな祭壇様が片目を閉じてニヤッとした。この星でもウィンクってあるんだな。
「別に…そういうアレでは…」
嫌いじゃない。それはまあ、うん、そうかもしれないけれど。
『おや、そういうアレとはどういうアレじゃろな? ンホホホ』
「なっ…、もう、からかわないで下さい!」
思わず平手で叩いてしまったけれどパリっと『壁』に受け止められてしまった。音的に手が痺れるのかと思いきや、さらっとした肌触りで結構気持ち良かった。思わず撫でたくなる。祭壇だし。
『さてと。小童よ、ここに参れ』
お爺さんが
「用があるならそっちから…」
「いやいやユッシーここは素直に行っとこうゼ?」
『
雰囲気が一気に変わった。有無を言わさぬ凄みと言うか巨大な存在感が辺り一面に圧し掛かっている。
感覚に素直な
「…
『よろしい。
ドガーーーンと雷鳴が轟いた気がした。気がしただけだが。
けれど
「…新人君ってナニ…。台無しだよ」
「誰のせいですか」
「良かれと思って…」
「良くない」
「申し訳…」
名称って本当に大事なんだと思い知らされた。恐らくこれが映画などだったらここ一番の見せ場なのではないだろうか。
「あ」
責任重大なカミサマが何か気付いた。
「どうしました?」
「や、
「え?」
その時、辺りを覆っていた白煙が急速に晴れていった。
「ちょ…いやああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
「忘れてたああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「…?」
何の事か分からないという表情で我々の痴態を眺める
その全身にモザイクを
(次頁:53へ続く)
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