頁41:異世界御手洗事情とは
ヂュギュンヂュギュン。
名を得た
我々にはまだアルコールと言うか酔いを与える物質が認識出来ない為酔い潰れこそしなかったものの、昼間の色々のせいで
ちなみに私はよしこさんの家の一室を貸して頂いた。
まだ薄暗い中目を覚ました私は、お風呂と言う概念がまだ生まれていないので取り敢えず体は井戸から汲んできた水で
うーん、当たり前に蛇口からお湯が出て石鹸で全身を洗えるという環境はどれだけ優遇されていたんだろうと思い知った。
そしてこの惨状である。まあ予想はしてましたけど。
起こして回ろうかと思ったけれど幸せそうな顔で眠っている人々の様子にそれも
差し当たってまず決めなければならない事。『ヴィクティムの巣』へのリベンジの為に必要な『人類としての成長』。
ざっくりとした目標ではあるが、ペナルティーにより歴史が一年分進められてしまった以上我々が
いや、引き上げるよりもまずは確かな形で定着させる方が先か? ううむ…こんがらがって来た。
「あ、おはよーハニー、すんげぇ鳴き声しなかった今?」
「おはようございます誰がハニーだぶっ飛ばしますよ」
「テキビシーー!!」
予想よりも遥かに早く起きたらしい
なんでこの人寝起きからこんなにテンション高いのだろう。
「そういやまたスーツにしたんだ…」
なんだか残念そうにこちらを眺める彼。
「これが私の生き方ですので」
「フーン…。オレちゃんにはその世界観は分からないケド、でもカッコイイね、そーゆーのも」
「…どうも」
この姿で毎日を過ごすのが当たり前であったのでまさか褒められるとは思わなかった。後頭部がムズムズする。
所でこれは『一日一回だけ外見をどうこう言う』に含まれるのだろうか。
「いやァ…見事にみんな潰れてるネ」
Tシャツの下に手を入れてボリボリ掻きながら辺りを見回す
「良くない事が色々続いた、とひろしさんが言ってましたし、皆さんそれぞれ腹に抱えた物があったんでしょうね。それにしても早起きですね? 予想外でした」
「うん、トイレ」
ああ…そうですか…。
「ひろしさんの家の裏手にもあるでしょう…。なんでわざわざこっちの方まで来るんですか…」
「え、トイレの前に散歩するでショ普通?」
どこの世界の普通だ。
「…じゃあもう十分でしょうからどうぞ気の済むまで行って来て下さい」
「イェス・マム」
めんどくさい人はそう言い残し誰のかも分からない家の裏手へ走って行った。
いや、でも【拠点】では星の創生作業で数百年もの間生理現象を止めていたらしいから正しい作法を忘れているのかも…。なんだトイレの作法って。真面目に考えてる自分が恥ずかしい。
おや…? なんだか表情が暗いような…?
「どうかしましたか?」
「みさチュー…、あのさ…」
「何ですか?」
お通じが良かった!とか言い出したら殴ろう。
「
「はぁ!?」
朝っぱらから半泣きのカミサマが
…取り敢えず手を洗ってきて頂けませんかね…。
◆◇◆◇◆◇
「…昨日の夜は暗かったし気持ち悪かったせいで気にして無かったケド」
手を洗って戻って来た
「トイレとは名ばかりのあのスペース…そりゃもうエライ状態でさ…
「じゃあ話さなくてもいいです」
「何でそういう事言うのぉぉぉ!? ここからが面白いのに!!」
面白いのかよ。
「みなまで説明されずとも予想はつきますので。…そうですね、昨夜話した『バタフライエフェクト』にも
「え?
まさか桶屋と略されるとは。まあ本人がそれで覚えやすいのであればいいか。
「
「なんかトイレが壮大な話になって来たネ…」
壮大と言うよりは元の地球の歴史の一側面であるが。
「川の流れの一部を家の下に引き込んで天然の水洗トイレとする事で排泄物による汚染を防いで来た歴史などもありますね。たい肥として使用した時期もありますがこれは後に登場した化学肥料により不要とされ、不法投棄により汚染の原因となりました。まあその辺はこの星とは関係無いかもしれませんが、
これはあくまでも日本の例ではあるが。
「いずれ? 今で結構アレな感じなんだけド…」
実際に目で見て来た光景を思い出したのだろうか、
「…口で説明するのもちょっと嫌なんですが…、現在の
「うぇぇ…無臭無色透明な感じのうんこなのにあの存在感…なんなん…」
「だからストレートに言わないで下さい!」
まあ生理現象であるのに
「とにかく、世界にトイレ文化を先に根付かせることが出来れば汚染による疫病の
「そっか、みさラーもトイレ必要だしュペョ!?」
「うるさい!」
言い切らせる前に脳天に手刀を叩き込んだ。
(次頁:42へ続く)
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