頁29:再訪と異変とは
「
「え? どれ??」
他のページを調べていて追加されたメッセージに気付いていなかったのだろうか。
あ、その前に。
「(忘れなさい!!)」
記憶操作の弾丸を
範囲は『シー!』と合図する直前から今の台詞の前辺りまでの検証実験の記憶。盗聴の件はいずれ話す事になるとは思うが今はまだ不確定要素が多すぎる。彼の性格上
「この一文です」
何事も無かったかの様にしれっと話を続ける。
今後口に出す言葉の内容は
「…はにゃ? お、おぅ?」
…ちょっと無理があったかしら?
私は自分の本と彼の本の同期機能を使って同じページを開かせ無理矢理会話を続けさせる。
「あれ? ナニコレ? カメラっぽいのとか動画機能追加されたの!?」
しまったああああああああ!!! その辺りの下りもかあああ!!
しかし私はその焦りを微塵も顔には出さず、代わりにニッコリと微笑むと…
「何を言っているんですか? また人の話を聞いていなかったんですか?
シュウさんならば声に出さずとも
「え? あ? ───ああ、イッケネーソウダッタァー。ゴメーンゴメーン」
「それで、この『全滅によるペナルティーが『 』に科されます。』というメッセージなんですが…」
「何に対してどんなペナなんだろうネ? 空白のせいで分かんないよね」
「誰のせいですか…」
「サーセン」
はぁ、と溜め息一つ。
「この【全滅】という部分ですが、これは明らかに我々に対する表現だと思います。地上の人達が今後出現していくであろうダンジョンや日常的なシーンで
「hmhm」
なんですかその
「このメッセージの前の部分ですが、我々はどうやら【創造者】【
「へんさんしゃ?」
金髪プリン神様が小首をかしげる。
やっぱり分からなかったか。
「
「なる! 編集者ね!」
「
「はい、ヘンサン」
誰だよ。
「話を戻しますが、この星にとっては神様ポジションである我々が地上にて死ぬという意味。予想するにそれなりの過失扱いなのではないでしょうか。しかし我々には今の所目立った変化は見受けられません。と言う事は、ペナルティーの矛先が向いているのは…」
この星のいずれか。
と言う前に
「ひろしさんにペナ!?」
「なんで」
「だって『大陸一の
「いや関係な」
「やばい…! こんな所で
私の腕をガシッと
「え? え??」
「どこでもゲート、オープン!!」
即座に開かれる
「いっくぜぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっとぉぉぉ!?」
ものすごい
「座標は───」
「え?」
転移が即座に行われ、ほんの少しの浮遊感の後───予想通り落下。またしても樹木の上だったのかバキベキと派手な音を立てて枝葉が犠牲になっていく。木の上に落ちたからって無事とは限らないのですが。
「ちょっと……」
「ナハハ……ゴメンナサイ…」
どうしてまた頭から落ちてるんだろうこの人。死なないけどお願いだから死なないで欲しい。
え? 詳細不明のペナルティーが怖いからですが何か?(キリッ)
「…大丈夫ですか」
無事に着地出来ていた私は彼に手を差し伸べる。
「え…ウソ…掴んでいいの? この手? 後で怒ったりしない?」
「私を何だと思ってるんですか!」
まあ
変な体勢のまま彼がおずおずと私の手を取ると───想像以上の力で引っ張って来た。私も流石の事に反応が遅れて
「
「え?」
直前まで私の頭があった場所を貫いていく砲弾。いや、あれは───
その物体は進行上に乱立している杉の木の幹を
「
「コイツ、ダンジョンの外にも登場するようになったのか!?」
前回の戦いの記憶が蘇り、無意識に体が震えた。武者震いと言えば格好はつくだろうが。
それよりもまずいのは、通常の個体ですらあれだけ苦戦していたひろしさんなのに、回転型と戦う事になったら
「
カウンターの蹴りを叩き込む為に構えを取る。次は打ち負けはしない。
こちらの意図など知る
「みザリー、そこどいて!」
「え?」
構えた私の前に
あの二人の記憶が脳裏を
「ちょっと、何考えてるんですか!」
「だから
「!?」
顔半分だけこちらに振り返り、ニカっと歯を見せる彼。よく見るとその手にはへし折れた杉のやや太めの枝。折れた先端は鋭く
「前回は何も道具が無かったケド…攻略法を研究すれば強敵だってぇぇぇぇ!!」
相変わらず真っ直ぐに突っ込んで来る物体のど真ん中に手にした得物を突き立てた。
「すごい…」
「は…はは……やった……」
硬直しているのは
「大丈夫ですか!?」
「う、ウン。手がちょっとビリビリしたけど…」
まだ枝を握りしめたままでいる両の手は小刻みに
私は彼の前にしゃがむとその手を取り、
「ちょ、あの…」
「難しいかもしれませんが力を抜いて下さい。筋が硬直してますので」
「あ…ハイ…」
まず全ての指を伸ばすと、片手ずつ掌のマッサージ。血流を戻し固まった筋肉を解す。それを両手に念入りに
「どうですか?」
「めっちゃ気持ちよかったっス……。この通りちゃんと動くヨ。ありがとうゴザイマシタ」
座位のまま深々と
「こちらこそ…最初に引っ張って貰わなかったら危ない所でした。ありがとうございます」
ノーガードの後頭部にあの攻撃を食らっていたらと想像すると背筋がヒヤッとした。
「や、それはその…
また聞いたその言葉。前はシュウさんに言われたけれど…。
「さ、急いで村に行きますか!」
「ええ」
同時に立ち上がると本を召喚し、方角を確認しつつ行動を開始した。
(次頁/30へ続く)
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