第312話 空帝ティフォーネの吐息

『が……あ……!!』


 サマエルの零距離射撃によって、エイシェトの肉体の首部、手首は半分吹き飛ばされ、胴体部もその攻撃によりごっそりともぎ取られていった。

 だが、サマエルの再生能力は肉体を共有しているエイシェトも保有している。

 みるみるうちにエイシェトの傷は再生していくが、それでもサマエルはその傷口に噛みつき少しでも再生を阻止する。

 さらに自分の首をエイシェトの肉体に巻き付け、彼女の身動きを封じていく。

 こんな至近距離でサマエルの首に攻撃を仕掛ければ、彼女自らの体を傷つけてしまうのを読んでいる行動である。


『やれ!!空帝ティフォーネよ!貴様の攻撃で我ごとこの性悪女を殲滅しろ!!

 このまま地獄を味わうのなら、操り人形になるのなら消え去った方が遥かにマシだ!元の次元は多少騒がしいだけで、ここに比べれば天国ということがよく分かった!!』


『お、お止めくださいサマエル様!何故わかってくれないのです!私は、私はこんなに貴方様を愛しているのに!貴方様への愛は揺るぎないのに!!』


『黙れ!何が愛しているだ!お前が愛しているのは自分自身だけだろう!!

 その証拠に、お前に巻き付いている我に対して攻撃を仕掛けようともしない!!

 それはお前が自分自身を巻き添えにして攻撃して自分が傷つくのが嫌なのだろう!』


 その夫婦喧嘩に対して、やれやれ、とティフォーネは思わず肩を竦める。


《やれやれ。あれだけ自分の好き勝手やっておいて「愛している」だけですまそうとするとは全くおめでたいですね。あれが『悪魔』というものですか。ともあれ、こちらにとって優位な状況を生かさない訳にはいきませんね。》


 ティフォーネは口を開くと、自分の最強の攻撃、ドラゴンブレスを放つために魔力のチャージを始める。

 彼女の開いた口元に集う超高熱原体。それは彼女が自らの魔力を雷化を通り越して直流アーク放電によって超高熱プラズマへと変化させているのである。

 直流アーク放電は変換可能なエネルギー量を増大させることが比較的簡単である。

 それによって、超高熱原体であるプラズマの威力をさらに増幅させているのだ。

 プラズマは、核融合を制御するために、1億度もの高熱に至るまで熱を上げられることができる。現代では2億度から5億度までの超高熱まで引き上げることができるのだ。そして、十二分の魔力チャージを行って、数億度にまで到達したそのプラズマを、ティフォーネはサマエルへと解き放った。


《プラズマジェット・ライトニングブラスト!!》


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