第311話 サマエル、怒る
エイシェトの巨大な肉体に対して、サマエルは複数の竜頭を無理矢理動かして、次々と巨大化した彼女へと噛みついていく。
ある意味自分で自分の肉体に攻撃を仕掛けているような物だが、彼は気にしない。
サマエルに食いつかれた痛みで、エイシェトは思わず顔をしかめる。
『が……あ……!!サ、サマエル様……!!何故……!!』
『何故も何もあるか。我をわざわざこんな騒音塗れの悪夢のような世界に降臨させ、しかもこのような醜い肉体を作り上げ、しかも我の力を自在に操ろうとする?そんなことをされて怒り狂わぬ者がいるか!!』
サマエルの怒りは実に最もである。そもそも、サマエルがこんな状況になっているのは全て彼女の仕業である。自分を不本意な状況に追い込んだ存在に怒りを抱くのは当然だろう。
『お、お聞きください……!これは全て貴方のため……!!全世界を滅ぼし、全生命体を滅ぼした後で元の世界に戻ればもう貴方は生命体の騒音に悩まされません……!!確かに、貴方の肉体に全生命体の死霊は流れ込みますが、すぐに送還の呪文を行えば……!!』
『そうして、空白になった肉体を、貴様自身が乗っ取る気だろう。面倒なことは我にやらせて、自分はいいところを取っていく。貴様の心は見え透いているわ!!』
サマエルの七つの竜の首は、次々とエイシェトの白い肌をした女体へと噛みついていく。喉を、手首を、胴体部を次々と噛みついていくその姿は、まるで女性に襲い掛かる邪悪な竜そのものだったが、実際は異なっていた。
首を噛みつかれ、みしみしと首を噛みちぎらんと力を籠めるサマエルの牙は、いかにエイシェトとしても、ダメージを食らっているらしい。
さらに、サマエルは噛みついたまま、零距離での憎悪に満ちた魔力の奔流、ドラゴンブレスをエイシェトの肉体に叩き出こむ。
その零距離攻撃に肉体を吹き飛ばされながら、エイシェトは絶叫を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます