第300話 エンシェントドラゴンロード

 サマエルの器がリュフトヒェンとアーテルのドラゴンブレスでも再生していくのを見て、どうしたものか、と考え込みながら飛行を行っていた彼らの傍の空間が歪み、そこから一人の純白の絶世の美女が姿を現す。

 それはリュフトヒェンの母親、つまり空帝ティフォーネその人だった。


「やれやれ。こんなろくでもない物を作り出して何がしたいのやら。

 まあいいでしょう。数百年ぶりに本気を出すとしますか。

 人間などどうでもいいですが、私の息子が作り上げた国を破壊されても困りますしね。」


 その言葉と共に彼女は人間形態を解除し、全長100メルーほどの巨大な純白の神々しい神竜へと姿を変える。

 リュフトヒェンたちと比べれば戦略爆撃機にも見えるその巨体。

 それはかつての超古代、神々の肉体すら滅ぼしたエンシェントドラゴンロードそのものの姿だった。

 ティフォーネは口を開くと同時に咆哮と共に竜語魔術を発動し、サマエルの上空に超高圧縮雷雲が出現し、次々と数百もの雷撃の雨がサマエルに襲い掛かる。

 まるで雨のように無数に襲い掛かる雷撃に、サマエルの肉体の表面が焼き尽くされる。しかも、それは一度だけではない。二度、三度と連続で襲い掛かっていくのだ。


《エキドナと同じように他次元追放封印術式で追放できれば一番手っ取り早いのですが……あのデカ図体では”穴”を作っても入りきれませんね。まずは肉体を削り取るのが一番ですか。》


 続いて、彼女は新たな魔術を展開する。この雷撃の雨は、ただサマエルの動きを封じ込めるだけにすぎない。

 彼女の咆哮と同時に、時空自体が引き裂かれ、巨大な”次元斬撃”がサマエルへと襲い掛かる。次元自体を切り裂く斬撃は、物理的な防御は全て無意味である。

 その巨大な次元斬撃は、サマエルの肉体の三分の一を両断する。

 極めて巨体な肉の塊をいとも簡単に、まるでリンゴを包丁で両断するほどの鮮やかで瞬時に両断され、切られた肉体は、そのまま地面へと落下していく……かと思われた。


 その瞬間、両方の傷口同士から無数の肉の糸飛び出して、お互いの傷口をまるで縫合の糸のように複雑に絡み合い、落ちていくはずの肉塊は見事に再生されていく。


《やはり、エキドナの核を培養しただけあって再生力は無駄にありますね。では、その再生力がどこまであるか試してみますか。空帝の怒りをその身で受けなさい。》




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