第299話 暴走2
器に降臨したサマエルは、思わずその七つの竜の首で絶叫し、咆哮する。
50%ほどで無理矢理降臨されたというのもあるが、ただただひたすらの平穏と静寂の世界を好むサマエルにとってこの器は煩すぎた。
『#$&’&&()#$*?>*∽()E*?>*>+()EQ?+*+>+‘+!!』
プレーンとなったエキドナの細胞はともかく、数千人もの生贄たちの血と魂が注がれて、その魂たちが悲痛な悲鳴を上げているのだ。
一体一体は弱くても、それが無数の数に塗れば、凄まじい騒音になる。
それに、サマエルは優れた感受性で外界の苦しみも感じ取ってしまう。
人間で言えば、静かな空間で安らいでいたのに、いきなり大音量の騒音が鳴り響いていたのと同じである。
エイシェトもその辺は調整する予定だったのだが、器も未完成で術式もまだ完璧に完成してしないのに、無理矢理降臨させられたため、結局未調整になってしまったのである。
そんな状態で他者のいうことなど聞くはずもない。
不完全な状態の魔神龍は、絶叫したままのたうち回るただの暴力装置でしかない。
下半分から伸びた無数の竜の口が、帝都を無差別に破壊した後で、サマエルは6枚の翼と後半分に肉塊を変化させた数十期もの噴出孔から魔力を推進剤として放出しながら移動を始める。
もはや、この大騒音を全て静かにするためには、世界全てを破壊して全生命を静かにさせるしかない。
その後で、この肉体を破壊すれば、今度こそ完全な静寂な世界が戻ってくるはずだ。生命という騒音を起こす元を全て壊滅させるべく、サマエルは動き出す。
しかし、それを阻止すべく、高速で大気を引き裂きながら接近してくる二体の竜が存在する。
それは、異変を察知して急速にアーテルとリュフトヒェンだった。
《うぇええ!何じゃあの肉塊は!グロテスクすぎるじゃろ!!》
《ともあれやるしかない!いくぞ!!》
彼ら彼女らは、七つの竜の頭を生やした巨大な肉塊に対して、初手からいきなりダブルドラゴンブレスを叩きつける。こんな巨大な物体に小細工をしても無意味という判断だからだ。だが、大気をプラズマ化させるほどのブラズマブレスも、魔力を加速して叩き込んだ魔力加速砲ブレスも、命中はしたもののその傷はみるみるうちにふさがってしまっていく。
自分たちの最大攻撃が全く通用しないことに、彼らは思わずどうしよう、と顔を見渡す。それに対して、一つの異変が起きた。
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