第301話 瞬間転移による核融合攻撃
《ならばこれならどうですかね。ちょっと下がっていない。切り裂かれても知りませんよ。》
ティフォーネは飛行しながら、数十もの次元断絶を作り出し、それをサマエルへと飛ばしていく。
水平、垂直、右斜め45度、左斜め60度、水平三連続、右斜め80度等々。
スパスパスパといっそ小気味いいほどに極めて巨大なサマエルの肉体は縦横無尽に細かく切り裂かれていく。
次元断絶の刃はある意味、この世界のあらゆる物に勝る切れ味を有している。
ましてや、柔らかい肉体であるサマエルの肉体など、まさに豆腐以下でしかない。
だが、それだけ細かく切り裂かれてバラバラになっても、サマエルの肉体は瞬時に再生・復元を行い元へと戻っていく。
エキドナの核を基にしただけあって、再生能力はエキドナにも勝るとも劣らない。
《ふむ、それでは次はこれを試してみますか。炎帝がいれば核融合なんて楽にできたんですけれどねぇ。いちいち重水素と三重水素とか作り出すの面倒くさいですから、テレポート方式でいきますか。》
ティフォーネがパチンと指を鳴らすと同時に、地面に転がっている帝都の破壊された残骸が適当にサマエルの体表面へとテレポートされて、突き刺さっていく。
否、それはただ突き刺さっているのではない。
テレポートにより、残骸とサマエルの肉体が『融合』しているのだ。
通常のテレポートでは絶対禁じ手のテレポートによる物体と物体との融合。それが行われた時どうなるか。
答えは、これである。
その残骸がサマエルの肉体と融合した瞬間、眩い凄まじい光が迸り、同時に凄まじい爆発と衝撃波が起こり、サマエルの肉体が大きく吹き飛ばされ、巨大なキノコ雲が発生する。しかもそれは一度だけではない。残骸が融合した部分から再度の大爆発が起きて次々とサマエルの肉体を吹き飛ばして、何本もの巨大なキノコ雲がサマエルの肉体から発生していた。
―――核融合爆発。
テレポートによって発生する物質と物質との融合の際に発生する禁断の方法。
それをティフォーネは何のためらいもなく使用したのである。
それに思わず慌てたのは傍を飛行しているリュフトヒェンだった。サマエルの下にはまだ近くに破壊された帝都が存在している。そんな近くで核融合爆発が起こったらどうなるか。核融合爆発により発生する”死の灰”が帝都へと降り注ぐことになる。
そうなれば、帝都は人の住める場所ではなくなってしまう。
核融合は核分裂に比べて死の灰が出るのも、放射線被害も格段に少ない。だが、帝都近辺でそんなことをされてしまってはたまったものではない。
《ママンちょっと待ってぇええ!!核爆発はやべーよ!!下に人がまだいるから!!》
《?何でですか?下にいるの貴方の国の住人ではないでしょう?たかが人間が数千人程度死ぬのに何が問題が?》
しれっとティフォーネはそう言葉を放った。
一応、彼女も被害は考慮して帝都に結界は張っていたが、それでも近くで核融合など起こされたらたまったものではない。
やはり、人間を何とも思っていない超越者思考は中々変わらないらしい。
ともあれ、仕方ないので渋々ながら彼女はこの攻撃を止める事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます