第283話 神聖帝国内部の状況

「全く、面白くないですわ。どなたでしたっけ?この作戦は完璧だ、などとほざいた人は。見事に失敗しているではありませんか。」


 ―――神聖帝国、帝都に存在する玉座。

 本来皇帝が座るべきその場所は、エイシェトが堂々と足を組みながら座っていた。

 皇帝は、エイシェトの力で洗脳させられ、ただ女に対して腰を振るだけの存在と化している。王座前で呆けた顔で必死になってエイシェトの配下の女たちに腰を振っている皇帝の姿は、エイシェトを楽しませたものだが、今の彼女は絶賛不機嫌である。

 それというのも、また正気を残している配下の意見を聞いた作戦の結果が見事失敗しているからである。

 確かにあの焦土作戦はよくできていた。

 敵軍が進めば進むほど、さらに助けを求められ、自然と兵站が保てず干上がっていく。

 しかも、戦いで敗北したわけでもないので、撤退もできず進んでいくしかない。

 進めば進むほど兵站に負担がかかるアリの巣地獄……だったはずなのだ。

 そう、空帝ティフォーネという反則級の存在さえいなければ。


「お、お待ちください!こ、これは空帝という予想外の要素が混入したからであって!そうでなければ私の策略は完璧で……!」


「問答無用。弁解は害悪と知りなさいですわ。」


 エイシェトが指を鳴らした瞬間、その参謀の肉体は彼の悲鳴と共に膨れ上がり、おぞましい肉塊へと変貌する。

 脈動するおぞましい肉塊に、女に対して腰を振っていた皇帝や大臣は全裸のまま獣のようにそれにかじりついて、おぞましい生肉を貪り食らっていく。

 そこにはもはや人間らしさは欠片もなかった。

 人間の本性を暴き出し、ケダモノへと変える。それがエイシェトの娯楽であったが、不機嫌な彼女はそれを楽しんでいる余裕はなかった。


「で?ほかに作戦はありませんの?」


「は、はっ!!いかに奴らであろうと、兵站線が長く伸びていることには変わりありません!長く伸びた兵站線に奇襲をかけてこれを遮断、そして周囲を取り囲んで袋叩きにすれば、敵地に孤立した奴らの力をそぎ落とせるかと!」


「では早急にそうしなさい。全く、どいつもこいつも無能だから困りますわ。」


 彼女はそういうと、深々とため息をついた。



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