第284話 奇襲失敗

 遠征軍と竜都本土からの補給路、兵站の要となっているのは、やはり陸路、馬車による運搬路が一番多い。

 ワイバーンを使用した空輸も行われているが、空輸は速度が速い代償に、運搬できる量、ペイロードが限られている。

 一生懸命ピストン輸送を行っているが、それでも陸路のほうが輸送できる量が多いのは当然である。

 そして、神聖帝国の奥地へと進めば進むほど、その兵站線は伸びていく。竜皇軍は、占拠した村々を兵站基地として、輜重兵たちが休息をとったりできる安全地帯にしているが、それでもそれは避けられない。

 そんな馬車の群れが街道を行ったり来たりしているのを、神聖帝国の兵士たちが狙って襲撃しないはずもなかった。


「……。よし、敵輜重兵たちを確認。怪物たちを放って攪乱する。」


 だが、彼らは忘れていたのだ。ゲリラ戦略は民衆の支持があってこそ成立する。

 地の利とこちらに味方してくれる民衆がいるからこそ、ゲリラたちはその力を最大限に発揮できるのだ。

 兵站基地となっている村々は、その恩恵を受けて今まで重税と焦土作戦において飢えていた状況から一遍し、まともな食事がとれるようになっていた。

 そんな彼らが、神聖帝国に味方するはずもなく、むしろ竜皇国に進んで協力するようになっていた。

 地の利に長けた村人たちは、当然奇襲を行うのに最適な地形も知っているし、こそこそと密かに動いている怪物たちのことも目撃している。

 それらの情報を村人たちは竜皇軍に全てリークして、大よその襲撃ポイントは逆に把握されてしまっている有様だった。

 そうなれば話は早い。隠れることができないように、わざと防備が甘いところを見せて、敵の怪物たち、ゴブリンやオークたちが完全に出てくるところを待ち構える。

 そして、襲い掛かってきたところを、ワイバーンたちの急襲によって逆に薙ぎ払っていったのだ。


「ワイバーン!炎で薙ぎ払えー!!」


奇襲をかけるはずのゴブリンやオークたちは、上空から強襲してきたワイバーンたちが吐く炎によって次々と焼き払われていった。

士気も何もない怪物たちは、上空からの攻撃にたちまち逃げ腰になって散らばって逃げ去る羽目になってしまっていた。

こうして兵站への攻撃は見事失敗に終わったのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る