第282話 単為生殖(修正)
神聖帝国に侵攻している中、小型化したリュフトヒェンと彼の母親であるティフォーネは二人とも同じ馬車に乗って進んでいた。
これは久しぶりにあった親子なので、水入らずで話せるように、というセレスティーナたちの心遣いなのだが、別段今更話すこともないので困っているのが実情である。
静かに目を閉じているティフォーネに対して、リュフトヒェンはふと今まで気になっていた事を彼女にぶつけてみる。
『ところでママンや。気になっていたけど、我の父親とかどんな竜なの?』
「?いませんよ?そんなの。」
瞳を開いてリュフトヒェンの疑問に答えるティフォーネ。
だが、その答えは彼の予想を大きく上回っているものだった。
あまりの答えに、思わずリュフトヒェンは茫然となってしまう。
『えっ?』
「簡単に言うと、私一人で貴方を生みました。ええと……そう、単為生殖とかそんな感じですね。エンシェントドラゴンロードともなれば、別に相手がいなくても一人で子供を産めますし。」
し、衝撃の新事実~!と思わずリュフトヒェンはショックを受けてしまう。
いやまぁ、これだけフリーダムな人……いや竜と合わせられる竜なんてそうそういないとは思っていたが、まさか単為生殖で自分を生んだとは、彼の予想外の返答だったのである。
蛇であっても単為生殖をする蛇は存在し、理由は不明であるが、繁殖相手になるオスが周囲に存在する環境であっても単為生殖が起こる事が判明している
『じ、じゃあこの時代に何で我を生んだの?』
単為生殖で生めるのなら、いつでもどこでも生めるはずである。
数千年単位で生き続けているエンシェントドラゴンロードがなぜこの時代に自分を産み落としたのか。その彼の疑問に、ティフォーネはこう答える。
「……何となく?気分?」
うわぁ、予想以上の最悪の答えが来た。
思わずジト目でママンを見てしまうリュフトヒェンに対して、普段は無表情なティフォーネもさすがに気まずかったのか、僅かに顔を赤くしてごほん、と咳払いをする。
「い、いえ。理由はありますよ?私とて不老不死ではありません。ここ最近何か嫌な予感がしてるので、私がどうにかなった時に貴方を生んだのです。この星の地脈の臍とも言える重要な拠点である大辺境を安定させ、大陸に地脈のエネルギーを安定供給させる。
それが貴方の役割です。私がどうにかなってもこの役目は維持しなければなりません。」
ええ…ママン死ぬの…?本当ぉ?という顔でティフォーネの顔を見てしまう。
強大な力を誇り、神々の肉体すら滅ぼした彼女たちが死ぬとは到底想像つかなかった。
しかし、彼女も肉体を持った存在。やはり死ぬ時は死んでしまうのだろう。
嫌な予感というのが肉体的な問題かそれとも外敵的な問題かは彼女自身にも不明のだろうが。
「そうですよ?決して役目を貴方に押し付けて楽隠居して自由を満喫しようなんて思っていませんよ?」
『おいこらママン。』
そのティフォーネの言葉に、思わずジト目で彼女を睨むリュフトヒェンだったが、彼女はしれっとした顔でそっぽを向いた。
そんな彼女に対して、リュフトヒェンは思わずはぁ、とため息をついた。
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